Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 運動器
シンポジウム 運動器2 はじめの一歩~動きで見る運動器の機能解剖~

(S470)

動きでみる手疾患

Ultrasonographic diagnosis of the finger flexion disturbance

中島 祐子, 砂川 融, 四宮 陸雄, 兒玉 祥, 林 悠太, 安達 伸生

Yuko NAKASHIMA, Toru SUNAGAWA, Rikuo SHINOMIYA, Akira KODAMA, Yuta HAYASHI, Nobuo ADACHI

広島大学整形外科

Department of Orthopaedic Surgery, Hiroshima University

キーワード :

 超音波装置の進歩と高周波プローブの出現により,運動器疾患の超音波検査による診断精度が格段に向上した.腱,筋肉,神経,骨,軟骨など浅層に存在する運動器の鮮明な画像に加え,血流情報もリアルタイムに得ることができ,時にひとつの症状から考えられるいくつかの疾患を超音波検査で鑑別することが可能である.今回は「指の動きが悪い」という症状から考えられる疾患の鑑別について紹介する.
指の屈伸という動作は,神経から筋肉に信号が伝わり,そして筋肉の収縮から腱に力が伝わり,腱がスムーズに滑走することによりはじめて骨を引っ張る力となり関節の動きとなる.超音波検査では,これらに関わる組織を一度に観察することができるため,どの段階で動きが障害されているのかを鑑別するのに有用である.加えて,超音波検査の長所である動きや血流情報をリアルタイムに得られることは診断にたどり着く大きな情報となる.
 腱の観察のポイントとして,連続性はあるか?形状や走行に異常はないか?血流信号に異常はないか?全く滑走しないのか,それとも制限されているのか?などがあり,これらの所見は腱の断裂,癒着,炎症性疾患,腱鞘の異常を診断する一助となる.筋肉の観察では,筋線維の走行異常や萎縮がわかる.さらに収縮の有無をみることは重要である.神経は近年神経束の観察も可能となってきた.神経の連続性,形態の異常を神経束レベルで見ることができる.神経の断裂や絞扼性障害,神経を圧迫するような占拠性病変がないかを見ることで神経麻痺の原因がわかることもある.
 臨床で鑑別が難しいものには,腱の皮下断裂と神経麻痺の鑑別があるが,これらの鑑別診断は,保存的に時間をかけてみてよいのか,早期に手術が必要かという,治療法選択の判断につながるため,非常に重要である.超音波検査では初診時に診断をつけることが可能である場合が多い.具体例として指の運動障害から腱鞘炎,屈筋腱断裂,伸筋腱断裂,腱の癒着,走行異常,前骨間神経麻痺,後骨間神経麻痺などの超音波検査による観察を紹介する.