Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 運動器
シンポジウム 運動器1 はじめの一歩~運動器の超音波解剖~

(S467)

末梢血管の超音波解剖

Ultrasound anatomy of peripheral blood vessels and nerves

服部 惣一, 大内 洋

Soichi HATTORI, Hiroshi OHUCHI

1亀田メディカルセンタースポーツ医学科, 2東京医科歯科大学大学院医師薬総合研究科臨床解剖学

1Department of Sports Medicine, Kameda Medical Center, 2Unit of Clinical Anatomy, Tokyo Medical and Dental University, Graduate School

キーワード :

はじめに:末梢血管の超音波解剖について,基礎と臨床応用という視点から論及する.
基礎
1. 血管の超音波画像は大きく2つに分けられる.血管の横断面を観察する短軸像と縦断面を観察する長軸像である.対象とする血管を探すためには周囲構造(神経など)との関係を観察する必要があるため,周囲との関係が分かりやすい短軸像を用いる.対象とする血管を同定した後に全体像の観察が必要な場合は長軸像が有用である.
2.血管は無エコーないしは低エコー性の円または楕円の構造として描出される.圧迫によって静脈は容易に押しつぶされるが,動脈では血管壁が厚いため拍動が観察される.
3.ある程度の太さをもった血管(大腿動静脈など)では,血流の方向と速度がカラードプラにより評価できる.末梢における血管や遅い血流の有無を同定する場合には,角度依存性が少ないためパワードプラの方がより検出力が高い.SMI(Superb Microvascular Imaging)ではより細かな血流を感度よく描出できるとともに,ノイズ除去能に優れるため末梢血管がきれいに描出される.  
4.血管は神経の近傍を並走することが多く,神経ブロックや,近年注目を浴びている神経へのハイドロリリースを行う際のランドマークとなる.末梢神経は部位,大きさ,プローブ周波数により描出のされ方が異なるが,近位の神経ほど低エコーに,遠位の神経ほど高エコーに描出されるという傾向がある.
臨床応用
1. 手術で避けるべき構造としての末梢血管:末梢血管の超音波解剖を理解することでより安全で低侵襲の手術手技が可能である.関節鏡手技におけるポータル作成において,血管(と神経)を術中に同定が可能であることが報告されている.また例えばアキレス腱縫合術にて小伏在静脈(と周囲の腓腹神経)を同定することで従来よりも低侵襲な手術が可能となる.
2.神経ブロックやハイドロリリースにおける末梢血管:超音波を利用することによって,従来のランドマーク法や神経刺激法と比較し神経ブロックがより容易になった.エコーガイド下神経ブロックにおいて末梢血管は,目標とする神経を同定する上での重要なランドマークになるだけでなく,針の進路上で避けるべき構造となる.神経周囲に生理食塩水を注入するハイドロリリースの手技においても同様に末梢血管はランドマークと同時に避けるべき構造物として重要である.
3.治療のターゲットとしての新生血管:スポーツ選手によく見られるオーバーユースの障害として腱炎や腱付着部炎(症)がある.近年その病因として異常な新生血管の関与が示され,この異常新生血管は神経線維の増殖を伴い腱炎(症)の疼痛に関わると言われている.このような新生血管(と神経線維)をドプラモードにて同定しながら,多量の生理食塩水(20~40cc)の注入によって異常な血流を遮断する方法や,太めの針(18G~20G)を抜き差しすることよって血流を遮断するエコーガイド下のインターベンションが開発されている.