Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
パネルディスカッション 血管1 血管エコーのスタッフ育成:私達はこうしています

(S461)

専門医による血管エコー教育体制

Educational system of vascular ultrasound guided by specialists

赤坂 和美, 藤井 聡, 東 信良

Kazumi AKASAKA, Satoshi FUJII, Nobuyoshi AZUMA

1旭川医科大学病院臨床検査・輸血部, 2旭川医科大学血管・呼吸・腫瘍病態外科学

1Medical Laboratory and Blood center, Asahikawa Medical University Hospital, 2Department of Vascular Surgery, Asahikawa Medical University

キーワード :

近年,広く行われるようになった血管エコーは,日本超音波医学会から標準的評価法も発表され,脈管診療を支えている検査法の1つである.非侵襲的に形態と機能を評価できる血管エコーの需要はますます高まると考えられる.検査の標準化と検査技術の普及のために,全国各地でハンズオンセミナーを含む講習会が開催されて効果をあげてきたが,未だに血管エコーのスタッフ育成は大きな課題である.血管エコーは診断と治療法選択に大きく関わる検査であるために,質の高い検査を行うには脈管診療に関する知識と理解が必要である.さらに疾患を有する症例ほど,複数病変や複雑病変のために形態評価は困難であり,また,機能評価に影響を与える因子も多い.限られた時間内で患者にとって有益な検査を行うためには,医師の視点にたち,優先順位を考えながら検査を施行し,報告書を作成することが必要となるが,血管領域においては指導的立場の医師が少ない.当院での専門医による指導を振り返り,今後のスタッフ育成を考えたい.
まず,血管エコーを担当する技師であることを医師に認識してもらい,顔の見える関係を築く.気になる症例の手術所見やその後の経過を教えてもらうなど,積極的にコミュニケーションをとることは技師が皆心がけていることであろうが,当院では医師も積極的に技師に伝えている.双方向性のコミュニケーションを保つためにも,緊急の依頼や検査目的の詳細指示など医師が技師に頼みやすい雰囲気と体制づくりも必須と考える.
検査室から診療現場へ出ていく機会の増加により,チーム医療を担う一員としての意識と知識が増し,患者の病態や状況の把握能力が高まり,検査報告書に反映される.当院では外来診察室でのエコー検査とカンファレンスへの出席がなされている.
末梢動脈疾患患者の自家静脈を用いた血行再建術後の血管外科外来診察時,診察室にエコー装置を持ち込み,技師がエコーによるgraft surveillanceを行っている.週一回ではあるが,医師の診察時に検査を行うことで自分の報告したエコー所見がどのように診療に活かされるかを学ぶことができ,診察の合間には医師に質問をしやすい環境が得られる.
カンファレンスに出席し,医師の視点を学ぶ.検査が依頼される背景とエコー検査に医師が期待していること,各症例において診療上重要視されているポイントを把握でき,さらにはCTやMRIなど他の画像を読影する力を身につけることが可能である.議論を聞くことで,カルテを読む力も増す.また,カンファレンスに出席する他職種とも連携をとりやすくなる.
学会発表や論文投稿は,血管診療を深く学び,エコー所見を吟味できる機会となる.準備段階においても自ら調べることや指導医とディスカッションすることは非常に有意義であるが,発表時の討論や原稿訂正時の助言はさらに貴重な学びの機会となる.
血管エコーのスタッフの教育において,検査技術の習得と,基盤となる脈管診療への理解の両者が必要であると考える.恒常的な教育体制は,進歩がめざましい血管診療を支えるために必要と考えられ,今後も学会や研究会には標準化や検査技術の普及と向上のための取り組みを引き続き期待する.地方在住者が利用しやすいネット配信やeラーニングのさらなる充実,可能であれば指導者不在の施設の検査者が相談しやすい体制があるとよいと考える.チーム医療を担う視点を養う王道はないため,時間をかけた地道な現場での取り組みも同時に重要であると考える.また,地域により差はあるであろうが,今後は施設内の多職種連携のみならず施設間の連携の重要性がさらに増すと考えられ,地域における教育体制も望まれる.