Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管3 血管エコー標準的評価法の改訂:何が変わった?

(S454)

血管エコーの新ガイドライン:静脈エコー実施上のポイントと注意点

New guideline for vascular ultrasound: Important check points for vascular ultrasound

山本 哲也, 岩永 史郎

Tetsuya YAMAMOTO, Shirou IWANAGA

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【はじめに】
深部静脈血栓症や下肢静脈瘤の診断に血管造影が行われた時代は過ぎ去り,血管エコー検査がgold standardとなった.現在では, 血管エコー検査は静脈疾患の診断に必須の検査法である.しかし超音波検査では,検査者の経験や技術によって検査精度が異なるため,検査法の標準化が求められる.新ガイドラインに基づいて静脈エコーを実施する上でのポイントや注意点について解説する.
【深部静脈血栓症(DVT)】
1)検査範囲:DVTを疑って検査を行う場合,一般的には下肢全体を近位側から遠位側まで検索する全下肢静脈エコーと,鼠径部から膝窩部までの中枢側のみを圧迫する検査法がある.総大腿静脈と膝窩静脈の2箇所に限定して圧迫する2 point CUS法(2 point compression ultrasonography),大腿静脈を加えた3箇所に限定して圧迫する3 point CUS法がある.これらの検査が陰性であった際には,下腿限局型DVTの近位部進展を見逃さないために,1週間後の再検が必要となる.
2)検査手技:①安静時評価,②静脈圧迫法,③血流誘発法を用いる.静脈圧迫法は短軸での操作が基本とされ,適切な検査手技の習得が必要である.
3)DVTの確定診断:圧迫による静脈非圧縮性や血栓エコー像などの直接所見と,静脈内の血流欠損や血流誘発法での反応不良などの間接所見がある.直接所見が得られれば,静脈血栓の確定診断とされ,間接所見しか得られない場合,静脈血栓疑いと診断する.
4)診断精度と診断のポイント:①部位診断:血栓範囲(中枢型,末梢型), ②性状診断:血栓形態(閉塞型,非閉塞型,浮遊型), 血栓性状の変化, ③血流診断: 還流障害について詳細に調べる.これらを総合的に判断して急性期か慢性期かを判定する.
【下肢静脈瘤検査(Varix)】
1)検査体位:逆流評価は立位で行うのが基本である.その上で,バルサルバ法やミルキングなどにより逆流を誘発する.
2)検査手技:①静脈径の計測:静脈径は検査体位や圧迫により変化するため,探触子を軽く皮膚に密着させ,同一条件下で計測する.少なくとも大伏在静脈系では大腿静脈と伏在大腿静脈接合部付近と大腿部,下腿部,小伏在静脈系では膝窩静脈と伏在膝窩静脈接合部付近と下腿部で計測する.②血流評価:カラードプラで観察する.探触子の末梢部(大腿部観察時は腓腹部,下腿部観察時は足部)をミルキングして圧迫解除時の逆流を検出する.健常な状態では下腿部,あるいは足部のミルキングで,圧迫時に急速な順行性血流を生じ,圧迫解除後に血流が停止する.弁不全が存在する場合,解除後に持続時間の長い逆行性血流を生じる.③血管走行の確認:静脈瘤の走行を確認し,接合する血管が大伏在あるいは小伏在静脈,穿通枝のどれかを同定する.④血栓:圧迫法で確認する.
3)診断精度と診断のポイント:表在静脈では500 msを超える逆流,大腿~膝窩静脈では1000 msを超える逆流を異常と判断する.穿通枝は潰瘍周囲に存在し,3.0~3.5 mm以上の径を有するものと,負荷で500 ms以上持続する表在側への血流を有意な弁不全と診断する.
【注意点】
DVTとVarixの検査は他の領域の検査よりも注意点が多い.これらを念頭に置いて,正確な検査を行う.