佐戸川 弘之, 松尾 汎, 小川 智弘, 佐藤 洋, 西上 和宏, 八巻 隆, 山田 典一, 山本 哲也

Hirono SATOKAWA, Hiroshi MATSUO, Tomohiro OGAWA, Hiroshi SATO, Kazuhiro NISHIGAMI, Takashi YAMAKI, Norikazu YAMADA, Tetusya YAMAMOTO

¹福島県立医科大学心臓血管外科, ²松尾クリニック内科, ³福島第一病院血管外科, ⁴関西電力病院臨床検査部, ⁵済生会熊本病院集中治療部, ⁶東京女子医科大学形成外科, ⁷桑名東医療センター循環器内科, ⁸埼玉医科大学国際医療センター

¹Department of Cardioavascular Surgery, Fukushima Medical University, School of Medicine, ²Internal Meidine, Mastsuo Clinic, ³Department of Vascular Surgery, Fukushima First Hospital, ⁴Department of Medical Laboratory, Kansai Electoric Power Hopistal, ⁵Intensive Care Unit, Saiseikai Kumamoto Hospital, ⁶Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Tokyo Women’s Medical University, ⁷Department of Cardiology, Kuwana City East Medical Center, ⁸Central Medical Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center

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【目的】
　静脈疾患には，下肢を主体として生じる下肢静脈瘤ならびに深部静脈血栓症（DVT）の二大疾患がある．その診断には，多くの検査法が用いられているが，超音波検査は第一選択となってきている．我が国では，日本超音波医学会により2005年にDVTに対する標準的診断法が発表されているが，下肢静脈瘤も含めた評価法はまとめられていない．そのため，静脈エコーの標準的評価法をまとめるため，2014年9月に日本超音波医学会，日本脈管学会，日本静脈学会の共同で小委員会が立ち上げられ，作業を行ってきた．今回，ようやく標準的評価法をまとめることができたので，その内容について報告する．
【標準的評価法の内容】
　総論ではまず，静脈疾患の画像診断として静脈エコーが第一選択である（クラス1レベルA）と推奨し，有用性について強調した．次いで静脈の解剖について記載したが，表在静脈および深部静脈について記載し，特に穿通枝は，存在する部位により分類されることを紹介し示した．さらに，各論とししてDVTおよび下肢静脈瘤の疾患ごとに診断法を示した．
1）深部静脈血栓症
　DVTの分類，診断の進め方について記載した．診断では，まずリスク評価を施行し，リスクに応じて静脈エコーを組み合わせて診断を行うように推奨した．次いで検査時の注意と体位，検査の範囲（全下肢エコーやproximal compression法），手技・手順，血流誘発法について記載した．DVT再発については，新たな圧迫不可部位の出現，残存血管内腔の増加を認める，と定義した．
2）下肢静脈瘤
静脈瘤の分類，CEAP分類について記載．検査法として，体位は可能である限り立位とし，逆流誘発手技を用いることとした（クラスI）．観察では，径の計測を行うこと，逆流誘発により逆流の有無を評価することを強調した．表在静脈では500msを超える逆流，大腿-膝窩静脈では1000msを超えるものを異常とした（クラス1）．穿通枝は，潰瘍周囲に存在し，3.0～3.5mm以上，500ms以上の逆流のあるものを不全と定義した．さらに治療後の検査法についても記した．
【まとめ】
　下肢静脈瘤と深部静脈血栓症に対する超音波による診断法についてまとめた．超音波診断は，下肢静脈疾患においてもっとも有用とされる重要な診断法である．日本では，まだ国内でのエビデンスが少なく，用語の統一性等の課題もあるが，標準的診断法の普及によりさらなる診断精度の向上が期待される．