英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管3 血管エコー標準的評価法の改訂:何が変わった?
(S452)
内中膜厚計測の意義と標準的測定法
The clinical significance and standardization of carotid intima-media thickness
石津 智子
Tomoko ISHIZU
筑波大学臨床検査医学
Department of Clinical Laboratory Medicine, University of Tsukuba
キーワード :
今回の新しい標準的評価法の提言の中で,内中膜厚Intima-Media thickness, IMTの意義を見直し,その計測方法は国際的に広く使用されている方法を標準的として推奨した.
IMTの現時点での意義として,次の1から4を明記した.(1)IMTはプラークが出現する以前の早期動脈硬化症の定量的評価として重要である,(2)IMTの経年的増厚はイベント増加と関連していると考えられる.(3)薬物治療や生活習慣の改善によりIMC肥厚の進展を抑制したという報告があるが,それがイベントの抑制と関連しているかは,未だ意見の一致をみていない.(4)IMT経年変化はあくまでも大規模研究で使用された指標であり,個人に対する治療効果の判定には用いるべきではない.さらにIMT最大値はIMT平均値よりも臨床的に動脈硬化性疾患のリスク層別化には有用であることも記した.
IMTの計測にあたってはより重要なIMTの最大値を計測すること,また,計測の差異はどの部位で計測したかを合わせて記載すべきとした.また,max IMT測定に際してはその部位がプラーク病変の範疇に入るか否かは問わずに,最大飛行部位を計測することを推奨した.これは,病理学的なプラーク形成を超音波形態のみから判定することは困難であるという立場に基づいている.また,IMT平均値はオプション計測という位置付けとした.臨床研究において使用する場合は,球部境界から心臓側へ10mm長の範囲の総頸動脈の深位壁を自動計測する方法を紹介した.また,平均IMT計測に変わり,新しい指標“IMT-C10”を提案した.IMT-C10は総頸動脈と頸動脈洞の移行部より中枢側10 mmの遠位壁におけるIMTである.IMT-C10の基準値を参考として提示している.概ねその健常者75パーセンタイル値はIMT-C10(mm)=0.2+(0.1X10代ごとの年齢)であり,これ以上であればプラークがなくとも年齢を加味したIMT異常値と判定でき,早期動脈硬化の所見とみなせるであろう.ただし,本指標を用いた前向き研究はなく,今後のエビデンスの集積が望まれる.