Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管2 深部静脈血栓症診療にエコーをどう活かすか

(S450)

深部静脈血栓症の診断と治療:DOAC時代を迎えて

Changes of diagonosis and treament for deep vein thombosis with application of DOAC

佐戸川 弘之, 高瀬 信弥, 若松 大樹, 瀬戸 夕輝, 黒澤 博之, 山本 晃裕, 藤宮 剛, 石田 圭一, 松本 理, 横山 斉

Hirono SATOKAWA, Shinya TAKASE, Hiroki WAKAMATSU, Yuki SETO, Hiroyuki KUROSAWA, Akihiro YAMAMOTO, Tsuyoshi FUJIMIYA, Keiichi SHIDA, Satomi MATSUMOTO, Hitoshi YOKOYAMA

福島県立医科大学心臓血管外科

Department of Cardiovascular Surgery, Fukushima Medical University, School of Medicine

キーワード :

静脈血栓塞栓症の診断と治療については,診断機器の発達,さらに新しい抗凝固薬(DOAC)が登場し,臨床での診断および治療方針に大きな変化がきている.そこで今回我々は,教室の深部静脈血栓症(以下DVT)に対する診断ならびに治療の変遷と成績について検討した.また,災害時におけるエコノミークラス症候群の検診活動を行ってきたが,その成績についても報告する.
【対象と方法】
①1990年から教室で経験したDVT例641例を対象とした.診断法の推移について検討するとともに成績,合併症,遠隔について検討を加えた.治療としては侵襲的治療として,腸骨静脈領域の重症例に対し,以前は血栓除去術を施行.1995年よりカテーテル血栓溶解療法(以下CDT)を導入して治療を施行している.内科的治療例における変化について後ろ向きに調査検討を加えた.②災害時検診では,問診によるリスク評価を行った上で,モバイルの超音波装置を使用し診断した.最近は,D-ダイマー測定装置も併用している.
【成績】
①DVT診断には,2000年以前は中枢型の12%に静脈造影が施行されていたが,最近は診断のみに施行されることはなくなった.超音波検査は96%の例で施行され,次いで造影CTが主体となっていた.治療では,CDT施行例は46例であり,保存的治療例に比べ血栓縮小率は有意に大きかった(p<0.05).しかし,最近は重症例の頻度が減少とともに,CDT施行数も減小し,下大静脈血栓例等に限定されてきていた.下大静脈フィルターは112例に114個挿入した.フィルター挿入例でVTEの増悪およびPE合併例は見られなかったが,最近はフィルター適応例も減少してきている.DVTのうち末梢型DVTが増加傾向にあり,多くの例でDOACが投与され外来治療例が増加,VTE増悪例はみられなかった.外来治療例では,静脈エコー検査が主体となり経過が追跡されていた.②東日本大震災時にはのべ2217名,広島土砂災害では30名,熊本大震災では650名にDVT検診を施行した.DVT検出率は3.3~10.3%であった.診断は移動型エコー,最近はD-ダイマー測定器も併用し診断を行った.診断されたDVT例はほとんどが下腿型であり,中枢型もしくは浮遊性で早急に治療が必要な例は約5%であった.
【結語】
DVTの診断およびスクリーニング検査の第一選択は静脈エコーであり,特に増加してきている下腿型や外来での治療例での経過観察に有用である.さらに災害時のエコノミークラス症候群検診の診断の主役も静脈エコーであり,今後はバックアップシステムの確立が望まれる.