Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管2 深部静脈血栓症診療にエコーをどう活かすか

(S450)

深部静脈血栓症診療にエコーをどう活かすか2011年福島での災害現場の経験から思うこと

How to make use of echo in medical treatment for deep vein thrombosis Thinking from experiences of disaster sites in Fukushima in 2011

佐藤 洋

Hiroshi SATO

関西電力病院臨床検査部

Department of clinical central laboratory, Kansai Electric Power Hospital

キーワード :

私は,2011 年3月11日に発生した東日本大震災において,福島県立医科大学が編成した『エコノミークラス症候群医療班』通称“チームエコ”に,下肢静脈エコースクリーニングを担当する技師として要請を受け,4月4日より1週間,福島県各地の避難所を巡り下肢静脈エコー検査を実施した.下肢静脈エコー検査要員の確保,超音波装置の調達,活動内容の情報発信,その後の活動を考えたポケットガイドの作成やハンズオン講習会の実現など,種々の貴重な体験をした.
1:活動目的が明確であるか:活動目的は明確で,誰が要請している事業なのかが明確である必要がある.個人単位での医療支援活動するのは困難である.
2;スタッフ確保とスタッフ確保と機材,物資の確保:災害医療に対しては,初期は活動としてはDMAT(Disaster Medical Assistance Team)人員や物資搬送の問題もあることから,必要な事業に対して最小限の人員,資材で任務を遂行する必要があると考える.現地での要求される仕事量が明確である必要がある.スタッフの身分保証も重要な問題である.
3:現地での活動内容の把握:医療支援を実施する場所での確保は重要で,地元自治体などとの事前,そして現場での交渉は重要である.
4:災害現場で組織的な下肢静脈エコースクリーニングは本当に必要なのか?:被災地で急性肺血栓塞栓症を発症させないことと下肢静脈エコーを実施することは,同じ意味ではない.適度な運動と水分補給を指導する方のことが重要であると感じる.
5:学術団体はどのように災害医療にかかわるのか?: 医療機関で日常的に実施している下肢静脈超音波検査と異なる.災害医療現場で実施する検査法をマニュアル化しておく必要がある.2011年に作成したポケットガイド「避難所で実践する下肢静脈超音波検査」は日本超音波医学会,日本心臓病学会,日本心エコー図学会のHPに掲載され手順書のひとつとして2016の熊本地震の折にも活用された.また下肢静脈超音波検査に対して日常業務にかかわるエキスパートを登録しておくようなシステムが学術団体として求められるのではないかと感じる.
まとめ:自然災害はいつ何処で起こるかわからない.迅速に柔軟に対応できるシステム構築が,医療機関や学術団体,行政など連携してDMATのような構築できればよいのではないかと思う.
図: 2011年4月6日 旧県立相馬女子高等学校にて(写真提供:読売新聞東京本社 写真部 多田貫司氏)