Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管2 深部静脈血栓症診療にエコーをどう活かすか

(S449)

下肢静脈瘤と血栓

Venous Thrombosis as a Complication of Varices and that Treatment

富田 文子, 髙志 賢太郎, 西上 和宏

Ayako TOMITA, Kentaro TAKAJI, Kazuhiro NISHIGAMI

1済生会熊本病院中央検査部, 2済生会熊本病院集中治療室, 3御幸病院LTAC心不全センター

1Department of Laboratory, Saiseikaikumamoto hospital, 2Intensive Care Unit, Saiseikaikumamoto hospital, 3Department of LTAC heartfailure, Miyuki hospital

キーワード :

【背景】
近年,治療の進歩により,下肢静脈瘤の日帰りでの根治治療が可能となり,治療件数の増加が著しい.下肢静脈瘤症例における血栓の評価としては,下記があげられる.
1. ミルキング法を安全に行うためのDVT評価
2. 二次性静脈瘤鑑別のためのDVT評価
3. 術前の深部静脈開存チェック
4. 表在静脈の血栓チェック(血栓性静脈炎合併の有無評価)
5. Endovenous heat-induced thrombus(EHIT):
Class1:伏在静脈血栓が深部静脈との接合部の近位側にとどまる.
Class2:血栓が接合部を超え,深部静脈径の50%未満のもの.
Class3:血栓が接合部を超え,深部静脈径の50%を超えるもの.
Class4:血栓が深部静脈を完全に閉塞.
【方法と結果】
2016年1月~2017年12月に下肢静脈瘤を目的に下肢静脈エコー検査を行ったうち,血栓のあった件数を確認した.
下肢静脈瘤を目的に下肢静脈エコー検査を行った357例(男性134名,女性223名,平均年齢 66±12歳 )中,39例にDVTを認めた.うち,12例は中枢側DVTであった.また,35例に表在静脈に血栓を認めたが,深部への伸展例はなかった.
同期間にEHIT評価を目的に行ったエコー検査では,239件(男性107名女性132名平均年齢64±12歳)中,class1:200件,class2:34件,class3: 5件,class4:0件であった.経過観察中にClass分類が増悪した症例は認めなかった.
【考察】
下肢静脈瘤においても,血栓の評価は,成因・状態把握・術前・術後のいずれのタイミングにおいても重要である.下肢静脈瘤の検査は時間と手間のかかる検査であるが,血栓の有無は治療・経過観察において重要な項目であることを念頭に置き,正確な評価を心がけることが大切である.
以下に下肢静脈瘤における静脈血栓評価の意義を提示する.
1. 下肢静脈瘤超音波では,静脈逆流評価のためのミルキング法を中心に検査を行う.しかし,深部静脈に血栓が存在する場合,ミルキング法は行わない,もしくは慎重に行う必要がある.そのため,下肢静脈瘤検査の前に,深部静脈血栓の有無を評価しておくことは重要である.
2. 下肢静脈瘤は一次性と二次性,先天性とに分けられる.二次性静脈瘤として,深部静脈血栓症後遺症が最も多く,下肢静脈瘤成因精査には深部静脈血栓症の評価を欠かすことはできない.また,深部静脈が閉塞している場合,表在静脈が側副血行路となっているため,静脈瘤の治療は行えない.術前の評価として,深部静脈血栓は大事なチェック項目である.
3.下肢静脈瘤の合併症の一つに,血栓性静脈炎があげられる.痛みを伴うため,痛みの原因精査として下肢エコーが行われる場合も多い.痛みの部位と血栓の部位・範囲の確認が必要である.まれであるが,深部静脈への伸展も念頭に置き,中枢断端の確認も行わなければならない.
4. 血管内治療として,近年,レーザーや高周波ラジオ波による血管内焼灼術が増加している.術後合併症として,出血斑,疼痛,血栓性静脈炎,皮膚熱傷,動静脈瘻,深部静脈血栓症,肺塞栓症,EHITなどがある.特にEHITは1~7.7%に見られるとの報告もあり,術後72時間以内に評価することが求められている.