小林 大樹, 末光 浩太郎

Hiroki KOBAYASHI, Kotaro SUEMITSU

¹関西ろうさい病院中央検査部, ²関西ろうさい病院内科（腎臓）

¹Central clinical laboratory, Kansai rosai hospital, ²Internal Medicine, Division of Kidney and Dialysis, Kansai rosai hospital

キーワード :

　超音波検査におけるレポートの役割は，実際に検査して得られた情報を正確に伝達することである．心エコーや腹部エコーは解剖学的に，大部分の症例で決まった部位にその臓器や血管が存在する．しかしながらバスキュラーアクセスエコーでは，患者個々によって，血管の走行や太さ，シャントの種類が異なる．自己血管内シャントでは，手関節部で橈骨動脈と橈側皮静脈とを吻合するタイプが多いが，何らかの理由により末梢側で作製できない場合は，さらに中枢側で吻合する．また，尺骨動脈と尺側皮静脈とを吻合したシャントもある．人工血管を用いた症例では，前腕ループ型や前腕ストレート型など，デザインは様々である．このように，本領域では，すべての症例に対応できる所見用紙のテンプレート化は不可能に近い．今回は，当院で使用しているレポートについて述べる．
　レポートを作成するという観点から，血管の走行や太さを文字だけで表現することは，非常に困難であり長文になりやすい．この抄録でさえも，文章での表現が難しいため，当院でのレポートの一例を呈示する．機能評価として，上腕動脈血流量と末梢血管抵抗指数（RI）を報告している．形態評価では，左側の腕のシェーマに血管走行の概要を示し，同時に走査した部位を記載している．一方，観察していない部位は線を引かず，評価した部位と，していない部位を明確にしている．吻合部近傍では，観察および評価が不可能な場合は点線で表現し，文言も併記している．動脈は赤線，静脈は青線に色分けすることで直感的に血管の走行を読み取れる．本幹または主要な血管は太い線で，分枝は細い線で表現している．そして，その横に詳細を示すシェーマを症例ごとにフリーハンドで記載している．しかし，このシェーマを記載することは，決して容易なことではない．多くの症例を経験し積極的にシェーマを記載する勇気が必要である．そして，その結果を血管造影所見と対比することで，自己のイメージ通りに表現できていたかを確認することが上達法となる．そうすることで，正確なシェーマを記載する能力が養われ，正確に伝わるレポートが作成できるようになってくる．シェーマを記載することは，様々な血管走行を示す症例に幅広く対応でき，うまく活用すれば，”伝えやすく”，”伝わりやすい”方法であると感じている．