Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 泌尿器
シンポジウム 泌尿器3 泌尿器科領域におけるPoint-of-Care超音波検査

(S437)

看護現場におけるエコー活用の現状と将来展望~看護学生への教育の取り組み~

Current situation and future prospects of echo utilization in nursing scene~ Educational efforts for nursing students ~

四谷 淳子

Junko YOTSUYA

福井大学学術研究院医学系部門看護学領域

Faculty of Medical Science, University of Fukui

キーワード :

超高齢化社会に対応するために,地域包括ケアシステムの構築がなされている.このような医療の変化に伴い,看護も高齢者看護や在宅看護に対する量的質的な充実が期待されている.そのため,看護師に求められるスキルも変化してきており,特にフィジカルアセスメントが重要視されている.
臨床で行なっているフィジカルアセスメントは,身体内部の状況を外から確認し判断する技術であるが,身体内部の状況をより適切にアセスメントするためには,「可視化」することが必要である.そこで,迅速かつ確実で,患者や家族にとっても安心安楽なケアへとつなげるために,看護師による超音波診断装置(エコー)の活用が広がりつつある.
看護ケアでエコーを用いたのは,褥瘡を観察することから始まった.皮膚表面ではさほどダメージがなくても皮下組織には損傷をうけているような場合など,肉眼では見えない部分をエコーで早期に発見し,治療およびケアを行なうことで,早期治癒に貢献している.看護ケアの様々な場面でエコーは活用が可能である.
2016年の診療報酬改訂により「排尿自立指導料」が新設し,スクリーニングおよび下部尿路機能評価として「残尿測定」が必須となり,膀胱用エコーが広く活用されるようになった.これを機に,訪問看護や高齢者施設などにおいても,排尿訓練,導尿,内服調整などの場面で,携帯型エコーを使用する看護師が増えてきている.またこれと同時に,エコーを活用するための看護師向けセミナーや研修なども増えてきているのが現状である.
このような臨床の変化に対応していくために演者らは,看護基礎教育にエコーを用いた演習を取り入れている.例えば静脈穿刺技術では,教科書から得た解剖の知識にプラスし,エコーにより動画で体内の情報を見ることにより,頭の中でより具体的な血管のイメージがインプットされ,採血時に確実に穿刺することにつながっている.排泄のケア技術では,膀胱エコーにて膀胱内の残尿量を確認し,排尿パターンと合わせて排泄機能についてアセスメントし,排泄トレーニングなどのケア計画を具体的に立案することなども取り入れている.このように基礎教育の段階からエコーで可視化することで,より確かな高度なアセスメント能力を身につけていくことができると考える.また,超音波画像は重要な客観的データとなり,この情報を共有することでより個々に応じたケアや治療が可能となる.コミュニケーションツールとして超音波画像が用いられることにより,チーム医療が活性化し,看護の質が上がることも期待できる.
「いつでもどこでも誰にでも」エコーを活用し,よりよい看護を提供するための教育現場での取り組みを紹介する.