Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 泌尿器
シンポジウム 泌尿器3 泌尿器科領域におけるPoint-of-Care超音波検査

(S436)

救急外来で役立つ泌尿器科領域のPoint-of-Care Ultrasound(POCUS)

Point-of-Care Ultrasound(POCUS) for the evaluation of the urinary system in emergency rooms

亀田 徹, 藤田 正人, 植林 久美子, 和貝 和子, 川井 夫規子

Toru KAMEDA, Masato FUJITA, Kumiko UEBAYASHI, Kazuko WAGAI, Fukiko KAWAI

1安曇野赤十字病院救急科, 2済生会宇都宮病院超音波診断科, 3済生会宇都宮病院臨床検査技術科

1Department of Emergency Medicine, Red Cross Society Azumino Hospital, 2Department of Ultrasound Medicine, Saiseikai Utsunomiya Hospital, 3Department of Clinical Laboratory, Saiseikai Utsunomiya Hospital

キーワード :

【はじめに】
救急の現場ではCTがすぐに利用できることもあり,超音波の位置づけは不明確になっている感が否めない.近年Point-of-Care Ultrasound(POCUS)という概念が普及し,救急外来での超音波活用の在り方について見直しを行う時期にあると考えられる.これまでの知見や自験例を紹介し,救急外来で役立つ泌尿器科領域のPOCUSの在り方について考察したい.
【尿管結石】
救急外来では尿管結石は頻度の高い疾患で,近年はCTによる診断が主流となっている.尿管結石は繰り返し評価が必要であり,再発のリスクも高いため,放射線被ばくについて考慮しなければならない.POCUSは以前から水腎症の評価に利用されてきたが,あらためてその役割について再検討が必要である.救急医らが施行するPOCUSの水腎症所見に基づいた尿管結石の診断について,CTを診断基準にすると,感度73-87%,特異度73-83%,陽性的中率66-91%,陰性的中率65-86%と報告されている.一方,大規模多施設無作為臨床研究によると,救急外来でPOCUSを尿管結石の初期診断に利用すれば,見逃しや有害事象の発生を上昇させることなく,放射線被ばくを減じることが示されている. 
【腎盂腎炎】
救急外来でPOCUSが普及すれば,腎盂腎炎患者に対するスクリーニングとしても是非活用したい.腎盂腎炎の多くは単純性だが,時に尿管結石などによる閉塞で水腎症を伴っていることがある.閉塞性の水腎症を伴う腎盂腎炎では,敗血症性ショックから致死的になることがあり,尿管ステント挿入など速やかな介入が求められる.POCUSが普及すれば,救急外来で腎盂腎炎が疑われた場合に,スクリーニングとして水腎症の有無を評価しておくことは,リスクマネージメント上も有用である.一方,腎盂腎炎の診断として超音波プローブで腎臓に圧痛があるかを確認する方法がある.特に病歴と身体所見が腎盂腎炎に非典型的なケースでは,この手法を用いれば,発熱や疼痛が腎臓由来であることの確証を得やすくなる.
【ガイド下手技】
尿道カテーテル挿入困難は男性に多く,原因には前立腺肥大などによる尿道の走行変化,頻回のカテーテル挿入による偽尿道の形成,尿道狭窄などがある.挿入が容易ではなく,盲目的に繰り返し挿入を試みると尿道出血や損傷の原因となる.我々は,尿道の走行が原因と考えられる尿道カテーテル挿入困難例に対し,直腸診を併用した経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入法を考案した.この手法は,特別な器具を使用することがないため,泌尿器科医以外の臨床医でも安全に施行可能で,夜間の泌尿器科医呼び出しの機会を減じ,患者への負担軽減につながると考えられる.
【ポケットエコー】
ポケットエコーによる水腎症の評価について詳細な検討はほとんど報告されていない.我々は超音波検査室との共同研究で,ポケットエコーによる水腎症の評価について盲検化による検討を行った.検査室を受診した100名の患者,200腎を対象に,水腎症の有無・程度(grade 0-4)の一致度について,ポケットエコーと高性能機種との比較検討を行ったところ,重み付けkappa = 0.83と良好であった.またポケットエコーは水腎症の除外診断に有用であることが明らかとなった.ポケットエコーは救急外来や院外での活用も期待できるので,改めて検討を行いたい.
【まとめ】
救急外来でPOCUSが適切に利用されれば,泌尿器科領域の診療において患者ケアの向上につながる可能性がある.