Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 泌尿器
シンポジウム 泌尿器2 小径腎腫瘍術前術後の画像評価のポイント

(S433)

腎部分切除術における術中超音波のポイント

Technical tips of intra-operative ultrasound in partial nephrectomy

大橋 宗洋, 本郷 文弥, 井上 裕太, 針貝 俊治, 藤原 敦子, 浮村 理

Munehiro OHASHI, Fumiya HONGO, Yuta INOUE, Syunji HARIKAI, Atsuko FUJIHARA, Osamu UKIMURA

京都府立医科大学泌尿器外科学

Urology, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【緒言】
小径腎腫瘍に対する腎部分切除術は,根治的腎摘除術と同等の制癌効果を保ちつつ,術後腎機能温存やQOLの維持,さらには全生存期間の延長が示され標準的治療法として推奨されている.その術式として,開放あるいは腹腔鏡下に加え,2016年4月にロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)が保険収載された.低侵襲性を保ちつつ術後腎機能温存,QOLの改善が期待できるRAPNが今後さらに広まっていくものと考えられる.術中超音波検査は,いずれの術式においても腎腫瘍局在の同定,想定外の腫瘍の探索,切除深度・範囲の決定などに必須の手技であり,近年ではドップラー画像による血管の同定ならびに選択的動脈阻血時の阻血区域の確認などにおいてその有用性が期待されている.今回は腎部分切除術の中で,特にRAPNにおける術中超音波について,我々の施設での成績ならびに超音波手技のポイントについて解説する.
【当院での成績】
2014年3月から2017年6月までに61例の腎腫瘍に対してRAPNを施行した.腫瘍平均径は27.3mm(10-57),平均R.E.N.A.L.nerhrometry scoreは6.9(4-10),アプローチは経腹膜57例,後腹膜4例であった.術中超音波装置として,UST-5550(ALOKA)を1例,Type 8826(BKメディカル)を11例,L43K(Hitachi Aloka)を48例,L51K(Hitachi Aloka)を1例に使用した.平均手術時間は249分(159-370),平均コンソール時間は185分(94-301),平均温阻血時間(WIT)は19分(0-39)であった.Clavien-Dindo分類Grade2以上の術後合併症として術後出血(GradeⅢa)を2例に認めた.組織診断はRenal cell carcinomaが56例(clear cell47,papillary 5,chromophobe 4),Oncocytomaが2例,Angiomyolipomaが2例,その他が1例であった.切除断端は全例で陰性であった.
【術中超音波】
RAPNにおける術中超音波検査の大きな発展がDrop-inタイプの USプローブの登場である.従来の腹腔鏡下手術用のUSプローブは先端がフレキシブルに可動できるとはいえ,硬性シャフトの影響により十分に描出可能な範囲は制約を受けていた.また,USプローブ操作は主に助手が行うため,術者の思い通りの操作・画像の描出が困難であるという欠点があった.一方で,Drop-in タイプのUSプローブでは,プローブの突起をロボット鉗子(プログラスプ)で把持することで,術者が意図する通りにプローブ操作が可能となった.また,硬性シャフトがないため,腹腔内で非常に高い自由度で操作可能な上,ロボット鉗子の広い可動域によって多方向からプローブの接触が可能であり,正確な病変の描出ならびに切除ラインの決定に非常に有用である.さらに,TileProマルチディスプレイシステムにより超音波画像がリアルタイムにコンソール画面に投影されるため,術者は視野を外すことなく手術操作が可能である.現在,L43K(Hitachi Aloka)およびType8826(BKメディカル)の2種類に加えて,L43Kの改良型であるL51Kが使用可能である.
【まとめ】
腎温存手術においては,Trifecta(WIT<25分,切除断端陰性,合併症なし)が周術期の達成目標とされており,腎腫瘍の局在,血管や腎盂との位置関係などを正確に把握することが肝要である.そのために,自由度が高く操作性・描出性能に優れた術中超音波診断は必須の技術と言える.腎門部腫瘍や埋没型腫瘍といった高難易度のchallengingな腎腫瘍切除の際には,さらにその有用性が発揮されるものと考えられる.