Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 泌尿器
シンポジウム 泌尿器2 小径腎腫瘍術前術後の画像評価のポイント

(S432)

小径腎腫瘍の治療選択における超音波の役割

Ultrasonographic findings of small renal cell tumor for evaluation of treatment options

丸上 永晃, 斉藤 弥穂, 丸上 亜希, 平井 都始子

Nagaaki MARUGAMI, Miho SAITO, Aki MARUGAMI, Toshiko HIRAI

奈良県立医科大学総合画像診断センター

General Diagnostic Imaging Center, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
検診や画像検査の増加によって,小さな腎腫瘤(小径腎腫瘍)が偶発的に発見される頻度が増えてきた.一方で,小径腎腫瘍が発生する背景には,長期透析を受けた透析腎の他,von Hippel-Lindau病などの遺伝性疾患の腎臓には小径の淡明細胞癌や嚢胞性腎細胞癌が発生しうる.これら小径腎腫瘍は一般に悪性腫瘍とは限らず,血管筋脂肪腫やオンコサイトーマ,複雑性腎嚢胞などの良性腫瘍のこともあるが,腫瘤径が小さいため画像で鑑別が困難となる事も少なくない.治療選択する上での超音波の役割には,小径腎腫瘍の発見や鑑別診断とした診断的な役割と,超音波下での生検や非侵襲的治療が可能かの術前治療支援としての役割に分けられる.本シンポジウムでは主に我々の施設で行われている経験をもとに小径腎癌診療における超音波の役割について述べる.
【結果】
1) 腎腫瘤の検出と鑑別診断について:診断的役割の第一としては検診・スクリーニング検査がある.2014年に発刊された腹部超音波検診判定マニュアルについて概説する.限界はあるものの,検診超音波からさらなる精査としては,高分解能なカラードプラやエラストグラフィー,透析腎に発生した小径腎腫瘤に対する造影超音波(非適応外)の有用性についても提示したい.
2) 腎癌のステージ診断(特にT3aについて):これまでT3aの診断において,腎摘出術が主な治療方法であれば腎外脂肪織浸潤の有無が治療方針に大きな影響を与えてきたが,小径腎癌に対して腎機能温存をはかる腎部分切除術が標準的治療となりつつある現在では,腎門部側の腎洞部脂肪織や腎静脈浸潤の有無が治療方針決定に大きな影響を与える様になってきた.昨年改定されたUICC第8版でも腎静脈やその区域静脈に進展する腫瘍の判断基準がより厳しくなっており,腎門側への腫瘍進展の術前診断の重要性がますます高まっている.画像での限界はあるものの,偽被膜の有無と腫瘍形態の評価の有用性について述べたい.
3) 術前治療支援(特に視認性について):小径腎腫瘤では様々な画像診断を駆使しても鑑別困難な場合もあるため腫瘍生検を行うことも多い.実際,経皮的超音波下での腫瘍生検が試みられるが,いざ検査室で超音波を当ててみても生検術者が視認できないことも少なくない.当院では生検予定の小径腎腫瘤では事前に超音波を行い,視認可能な腫瘍であるかを評価している.また,埋没型の小径腎癌は,術中超音波下で切除範囲を決定するため,埋没型腎癌の術前においても事前の超音波での視認性の確認を行っている.
【結語】
小径腎腫瘤の診療には腫瘤の検出から診断のみならず治療ガイドとして様々な場面で超音波が活用されている.特に治療前での超音波の使用には担当医である泌尿器科医や放射線科医との連携を密にした情報共有が臨床上大切である.