Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺2 甲状腺癌の超音波によるサーベイランス (アクティブサーベイランスを含む)

(S423)

特に小児若年者甲状腺癌症例について

Surveillance for the thyroid cancer after the operation by the ultrasonography, especially for the childhood, adolescent and young adult thyroid cancer

鈴木 眞一, 松本 佳子, 大河内 千代, 岩舘 学, 鈴木 聡, 中野 恵一, 中村 泉, 福島 俊彦, 水沼 廣

Shinichi SUZUKI, Yoshiko MATSUMOTO, Chiyo OUKOUCHI, Manabu IWADATE, Satoshi SUZUKI, Keiichi NAKANO, Izumi NAKAMURA, Toshihiko FUKUSHIMA, Hiroshi MIZUNUMA

福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座

Department of Thyroid and Endocrinology, Fukushima Medical University

キーワード :

 甲状腺癌のサーベイランスというと,頚部触診と血中サイログロブリン測定が最も多く用いられているが,最近の超音波検査の精度が向上し,我々外科医自身が超音波検査を行いサーベイランスを施行している.すなわちsurgeon performed ultrasonographyを行なっている.とくに最近福島では小児の大規模超音波検診によって震災前より多くの小児若年者甲状腺癌が発見されている.検診によって早期発見されていることと,予後良好な若年者であること,永続的服薬を多くの保護者が望まないことなどからできる限り片葉切除を施行している.したがって,術後のサーベイランスもできる限り負担の少ない形でなおかつ精度の高いサーベイランスを心がけ実施している.
 術直後の1−2年は半年ごとの採血(FT3,FT4,TSH,Tg)と頚部触診のほかに,頚部リンパ節と対側甲状腺再発には超音波検査が有用であることから,1年ごとの頚部超音波を実施している.学生に関しては,夏季,冬季,春季休暇を利用し,心理的,物理的負担の軽減を図っている.サーベイランスも周術期と同様に心のケア専任スタッフにも対応してもらいながら,ややもすると来院が途切れがちな若年者について工夫している.対象者の大半が乳頭癌であり,対側甲状腺のみならず頚部LNの検索が重要となる.Tgが異常高値を示した場合には,全摘例ではIシンチないしCT(PETCT)となるが,対象者が20歳未満の場合より放射線被ばくの少ない検査から実施している.
小児若年者は術前から生理的リンパ節腫脹が多く認められ,大きさだけでなく,リンパ門の描出や,内部エコー,血流,微細高エコー,嚢胞の有無などを参考にし,疑わしい場合には穿刺吸引細胞診や穿刺液のTgを測定する.小児若年者甲状腺癌は腺内散布例が多いことから,対側甲状腺内に原発巣に類似した低エコー像や高エコースポットを認めた場合には注意を要する.気管周囲リンパ節転移を発見するのは容易ではないが,低エコーを認めた場合には注意を要する.しかし,甲状腺自己抗体陽性例では生理的腫大が多く,鑑別に難渋した場合には細胞診ないし穿刺液Tg測定を行い鑑別する.またドプラエコーやエラストグラフィも鑑別診断には有用である.小児若年者甲状腺癌手術例の大半が小切開ではあるが肥厚性瘢痕の場合にはプローブの当て方に工夫を要する.
 以上,現時点でのsurgeon performed ultrasonographyを中心とした小児若年者甲状腺癌術後サーベイランスについて紹介する.