Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺がん

(S412)

小児および若年者甲状腺分化癌の臨床像と長期予後

Differentiated Thyroid Carcinoma in Children and Adolescent: Clinical Characteristics and Long-term Follow-up

杉野 公則, 伊藤 公一

Kiminori SUGINO, Koichi ITO

伊藤病院外科

Surgery, Ito Hospital

キーワード :

小児甲状腺分化癌は発生が稀なため多数例の報告が少なく,臨床的特徴や治療成績については議論が多い.本発表では当院で経験した小児および若年者甲状腺濾胞癌について,その臨床像および治療成績について検討した.
対象と方法:1979年から2014年までの36年間に当院で初回手術治療を行った20歳以下の甲状腺分化癌症例288例を対象とし,後方視的に予後を検討した.女性252例,男性38例,年齢は7歳から20歳(中央値18歳),小児(15歳以下)は70例,若年者(16~20歳)は218例,組織型は乳頭癌250例,濾胞癌38例であった.疾患特異的生存率(CSS),無再発生存率(DFS)はKaplan-Meir法にて求め,各因子での有意差はlog-rank法で検定した.多変量解析はCoxのProportional hazard modelを用いた.検定ソフトはJMP ver. 12.0(SAS, Cary NC, USA)を使用した.
結果:原病死は3例に認めた.分化癌全体での20年,30年疾患特異的生存率(CSS)はそれぞれ99.5%,98.2%であった.再発は52例(18.1%)に認めた.10年,20年,30年無再発生存率(DFS)は84.7%,75.2%,63.8%であった.遠隔転移は36例(初診時22例,経過中14例)に認め,全例肺転移であった.33例に放射性ヨウ素内用療法を行い,奏功率は67%であった.
組織型別での原病死例,再発例は乳頭癌ではそれぞれ3例,51例に,濾胞癌ではそれぞれ0例,1例に認められた.乳頭癌の20年,30年CSSはそれぞれ99.5%,98%,濾胞癌ではいずれも100%であった.10年,20年,30年DFSは乳頭癌でそれぞれ82.5%,72.8%,61.4%で,濾胞癌でいずれも95.4%であった.多変量解析による乳頭癌におけるDFSに関与する因子は術前に判明しているリンパ節転移,腺外浸潤,術後組織学的リンパ節転移個数であった.腺外浸潤,リンパ節転移,遠隔転移のない非進行乳頭癌症例で検討すると甲状腺切除範囲や予防的リンパ節郭清はDFSに関与していなかった.
結論:小児および若年者の甲状腺分化癌の生命予後は良好であったが,再発は多かった.成人同様に乳頭癌では成人同様に再発危険因子を加味して治療方針を考慮する必要がある.一方,濾胞癌の予後は極めて良好であった.