Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺がん

(S411)

臨床的に発見された小児甲状腺乳頭癌の特徴と予後

Characteristics and Prognosis of Clinically Discovered-Papillary Thyroid Carcinoma in Children

内野 眞也, 渡邉 紳, 菊地 勝一, 大野 毅, 野口 志郎

Shinya UCHINO, Shin WATANABE, Shoichi KIKUCHI, Tsuyoshi OHNO, Shiro NOGUCHI

医療法人野口記念会野口病院外科

Department of Endocrine Surgery, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【はじめに】
小児甲状腺乳頭癌の発生はまれである.過去に臨床的に発見された小児乳頭癌の特徴と予後を知ることは,福島県民健康管理調査においても有用な情報となる.ここでは臨床的に発見治療された小児甲状腺乳頭癌の特徴と予後について述べる.
【対象と方法】
当院悪性腫瘍データベースに登録されている,1961-2013年迄に当院で手術を受けた19歳以下の乳頭癌を対象とした.ここでは,10mm以下の微小癌およびバセドウ病合併乳頭癌は除外した.臨床病理学的因子,再発予後データとの相関はSAS JMP v8.0.2を用いて行った.平均追跡期間は17.2±12.5年.また症例を15歳以下のA群と16歳以上のB群に分けて解析を行った.
【結果】
11mm以上の小児乳頭癌は108例(男14,女94)登録されており,同時期に手術した全乳頭癌の約1.6%であった.手術時平均年齢は16.5±2.9歳(6-19歳)であり,10歳以下は6例(5.5%)と少なく,16歳以上が2/3を占めていた.術前肺転移は7例(6.5%),術前診断が良性であったのは24例(22.2%)であった.平均腫瘍径は30.5±14.3mm(11-75mm)と比較的大きな腫瘍になって発見されていた.甲状腺切除範囲は,葉部分切除13例(12%),葉切除33例(31%),亜全摘40例(37%),全摘22例(20%),リンパ節郭清範囲は,D0 16例(15%),D1 9例(8%),D2 64例(59%),D3 19例(18%)であった.病理学的リンパ節転移は,n0 6例(5%),n1a 12例(16%),片側n1b 56例(49%),両側n1b 18例(16%)であった.再発は29例(26.9%)に認め,その部位(重複含む)は同側外側区域リンパ節17例,反対側外側区域リンパ節12例,中央区域リンパ節5例,残存甲状腺4例,上縦隔1例,肺10例,骨0例であった.原病死は1例(1%),他病死2例,不明死1例であった.Kaplan-Meier法による術後40年無病再発率は62.7%であり,40年疾病特異的生存率は95.5%であった.n0症例は全例無再発であり,n1a,片側n1b,両側n1bにおける各無再発生存率に有意差はなく同等であった.15歳以下のA群は36例,16歳以上のB群は72例であり,無病再発率はA群で不良の傾向はあるものの,両群間に有意差はなかった.
【結論】
臨床的に発見された小児甲状腺乳頭癌の特徴は以下のとおりである.①10歳以下にみられることはまれであり,10歳以降は年齢とともに発生頻度は上昇する.②外側区域リンパ節へ転移した状態で診断されることが多く,外側区域リンパ節郭清の対象になることが多い.③生涯追跡が必要である.生存予後はきわめて良好であるものの,再発率は高い.最も多いのは頸部リンパ節再発であり,次に肺転移である.