Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺がん

(S410)

オーバービュー 小児・若年者に対する超音波健診

Overview; Ultrasound screening of thyroid diseases in children and adolescents

志村 浩己

Hiroki SHIMURA

1福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座, 2福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター

1Department of Laboratory Medicine, Fukushima Medical University, 2Radiation Medical Science Center, Fukushima Medical University

キーワード :

 東日本大震災に引き続いて発生した原子力発電所事故は放射能汚染による福島県民の甲状腺癌への憂慮に対応するため,本学会をはじめとする日本の関連7学会に所属する全国の医療関係者や研究者の全面的協力のもと福島県民健康調査「甲状腺検査」が震災の約半年後に開始された.本検査は,超音波検査による結節性病変のスクリーニングを行う一次検査と,それにより5.1mm以上の充実性結節(嚢胞成分を伴う結節も含む)と20.1mm以上の嚢胞を指摘された受診者に対する精密検査としての二次検査から構成される.
 1巡目検査にあたる「先行検査」は震災時18歳以下の全県民約36万人に対し行われ,対象者の81.7%が受診した.「先行検査」では,嚢胞は47.9%,結節は1.3%,細胞診診断での悪性・悪性疑いは0.038%に認められ,これらの性差および年齢分布等,従来ほとんどデータがなかった小児・若年者の甲状腺結節性病変に関する事故後3年以内の疫学的知見が集積された.これらは,今後の甲状腺検査の結果を評価する上で基準となるものと考えられている.また,これまで3巡目にあたる検査まで行われており,2018年度より4巡目の検査が開始される.
 福島県県民健康調査「甲状腺検査」を契機として,これまで余り知られていなかった小児甲状腺癌の臨床像,超音波所見,治療成績等が最近明らかになってきており,今後,小児甲状腺癌に対するガイドライン策定も望まれている.本シンポジウムでは,小児甲状腺癌に関する研究を推進しているシンポジストにより,現時点までの研究成果を紹介して頂き,今後の課題について議論を行いたいと考えている.本学会の会員にも日常臨床に役立つ情報が多く得られるシンポジウムになると期待される.