英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺3 非腫瘤性病変における超音波画像評価のポイント
(S406)
非腫瘤性病変の理解のための正常構造からの逸脱部観察法
Observation method of deviation from normal structure for understanding non-mass lesion.
何森 亜由美
Ayumi IZUMORI
高松平和病院乳腺外科
Takamathu heiwa hospital, Breast suegery
キーワード :
非腫瘤性病変による「低エコー域」の評価を行なう際の基本は,乳腺の正常構造である「乳管-小葉-周囲間質」と「腺葉分布」を観察する技術とそれを理解する知識である.低エコー域の良性のバリエーションは,主に他とは異なる「小葉分布の密度」や「周囲間質の容量の分布」であり,それらが超音波でどのように見えるのかを知る事が必要である.良性バリエーションの画像パターンから逸脱しているものは精査対象となる.
また,「構築の乱れ」についても,正常構造の一部を見ているものから,放射状瘢痕,硬化性腺症などの良性,小葉癌,浸潤がんなどの悪性のものなど様々であるが,これらの違いを判別するポイントは,構築の乱れの全体像を立体的に観察してパターンを読み解く事である.
さらに検診で重要な非腫瘤性病変の評価の一つに,マンモグラフィー(MMG)の局所的非対称性陰影(FAD)の評価がある.評価の為には,まずは乳腺分布や腺葉間の脂肪等を目印にしてFADがあるとされる部位が,超音波で正しく同定できることが重要である.同定された部位に低エコー-不明瞭位域を認めた際には,MMGの情報と合わせて病変の構築パターンについて観察し易い角度を探す.今回のシンポジウムでは,検診でよく遭遇するFADの超音波画像について供覧したい.
最近は低流速血流の血管構築が短時間で容易に観察可能となってきており,非腫瘤性病変においても有用な情報となる.特に乳管内病変ではアーチファクトも少ないため,低流速血流の血管構築が綺麗に観察出来ることが多い.非腫瘤性病変での血管構築の見え方と組織推定について実際には供覧してみたい.
非腫瘤性病変の評価は,乳腺基本構造の超音波画像と腺葉構造の理解があれば判定をより正確にすることができる.今回取り上げたポイントは,そのために不可欠な知識と考え方と言ってもよいだろう.皆さんとともに改めてこれらの重要性を再確認する場としたい.