Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺3 非腫瘤性病変における超音波画像評価のポイント

(S404)

検診における非腫瘤性病変の評価

Evaluation of non-mass abnormalities in examination

坂 佳奈子

Kanako BAN

公益財団法人東京都予防医学協会がん検診・診断部

Department of Cancer Detection and Diagnosis, Tokyo Health Service Association

キーワード :

【目的】
非腫瘤性病変は非浸潤癌を第一に考えるような病態であるが,浸潤癌も含まれる.しかしながら,非腫瘤性病変と言われるものの大部分は良性あるいは正常のバリエーションであり,実際に非腫瘤性病変の超音波像として見られる乳癌は数も少ない.そのことを踏まえ,特に検診施設では要精査に回しすぎないことが必要だと考えている.今回,私たちの施設で実施した超音波検診における非腫瘤性病変の割合,がん症例の割合などを算出し,注意すべき非腫瘤性病変の特徴について検討した.
【対象と方法】
2014年4月から2016年3月までの2年間に当施設で行われた超音波単独検診の中の中でカテゴリー3以上の判定のついた非腫瘤性病変をretrospectiveに検討した.
【結果】
同期間中の乳房超音波検診数は10,804件であった.そのうち非腫瘤性病変と評価した所見のあるものが489例(4.5%),その中でカテゴリー3以上の所見とし要精査とした症例が59例(全体の0.5%,非腫瘤性病変の12.1%)であった.
年齢は26歳~72歳で平均年齢は43.6歳であった.
最終結果は確認の取れた51例について検討した.乳癌は6例であった.所見別に結果を報告する.
1.乳腺内の低エコー域
44例中結果確認できたものが40例であった.生検をしたのが11例でその結果は浸潤性乳管癌(IDC)が4例,非浸潤性乳管癌(DCIS)が2例,乳管内乳頭腫(乳管拡張につながる低エコー域)が1例,乳腺症が2例,乳腺炎後の変化が1例であった.数回の経過観察で不変,血流シグナルなしなどの検をしなかったポイントであるが,精査では低エコー域の所見自体が認めらない.良性疾患の手術瘢痕であったなどの症例もあった.点状高エコーを伴う低エコー域にため検診ではカテゴリー4としたが精検時のマンモグラフィ(MG)では石灰化が確認できず点状高エコーは石灰化ではなかったという症例もあった.
2.乳管の異常
乳管内の充実性エコーの症例が10例,結果判明が8例であったが,3例は数回の経過観察で不変で乳管内乳頭腫と判断,他の症例は充実性エコーは存在せず,拡張乳管のみであった.流動性エコーの症例も1例あったが2回の経過観察で不変で問題なしと判断.乳管内の点状高エコーを伴う充実性エコーが1例であったが精査時には拡張乳管のみでカテゴリー2であった.
3.多発小嚢胞(小嚢胞集簇)
2例で1例のみ結果を把握している.その1例は58歳で精査時には嚢胞の所見も見られなかった.
4.構築の乱れ
1例あったが,精査時には全く所見がなかった.
5.乳癌症例
乳腺内の低エコー域を主とした症例にのみ見られた.点状高エコーを伴っているものが3例,点状高エコーはないが乳腺の厚みの増加,異常な血流シグナルの確認できたものが2例,拡張乳管内に充実性病変があり更に低エコー域を合併している症例が1例であった.
【結語】
当施設における検診で要精査になった非腫瘤性病変を検討した.乳管の異常(低エコー域を伴っていたものを除く),多発小嚢胞,構築の乱れには乳癌症例はなかった.精検時にはその所見すら認められない症例も多く,検診での拾い過ぎが考えられた.点状高エコーはMGを撮影するだけで良悪性の鑑別を要する石灰化ではないことも多いので,迷う時には精査にしても良いが,精査時のMGで石灰化ではないと確認できれば長期フォローは不要だと考える.乳腺内の低エコー域には癌症例が含まれていたが,注目すべき点は点状高エコーの合併と血流シグナルの増加であった.