Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺2 乳がん広がり診断における造影超音波

(S402)

造影超音波による広がり診断を行う際の問題点

Problems in diagnosing how much cancer has spread by contrast enhanced ultrasonography

中村 卓, 野呂 綾, 島 宏彰, 奥野 敏隆, 平井 都始子

Takashi NAKAMURA, Aya NORO, Hiroaki SHIMA, Takatoshi OKUNO, Toshiko HIRAI

1名張市立病院乳腺外科, 2三重大学病院乳腺外科, 3札幌医科大学医学部消化器・総合・乳腺・内分泌外科学講座, 4神戸市立西神戸医療センター乳腺外科, 5奈良県立医科大学附属病院総合画像診断センター

1Breast surgery, Nabari city hospital, 2Depertment of breast surgery, Mie university hospital, 3Department of surgery, Surgical oncology and science, Sapporo medical university hospital, 4Breast surgery, Kobe city nishi-kobe medical center, 5Depertment of general diagnostic imaging center, Nara medical university hospital

キーワード :

【はじめに】
現在,乳癌の広がり診断においては,乳房造影MRIが最も広がりを反映しているとされている.しかし,乳房MRIの撮像体位は腹臥位であるので,そのままの体位では手術時の切除範囲のマーキングはできない.
そのため通常は,腹臥位で乳房造影MRIを撮像後,仰臥位で乳房超音波検査を行い,乳房造影MRIに相当すると思われる部位をマーキングすることになる.
しかし,乳房造影MRIでは造影剤が使用されているため,通常の乳房超音波検査(B-mode)だけでは造影剤を使うことで初めて知りえる広がりをとらえきれていない可能性がある.
【目的】
乳癌の広がりを他画像や病理と比較する際に問題となっていることを検討する.
【方法】
多施設で後ろ向きに乳房造影超音波検査の広がり診断の有用性を検討する中で,
疑問,質問,問題の多かった点を検討する.
【結果】
問題点を整理すると以下のようになった
1:多施設研究ならではの施設間の問題(超音波機器の機種・設定の違い)
2:検査どうしの比較の際におこる問題
2-1,比較する断面(主に,USと病理の間)
2-2,比較する体位(主に,MRI/CTとUSの間)
3:個々の検査内容の問題
3-1,手技的なもの(ホルマリン固定時間・条件で病変が収縮するか)
3-2,判定に関するもの(造影USのどこまでを病変部と判定するのか)
2-1の断面に関しては,造影超音波検査,手術,切り出し作業において,すべて同一人物が立ち会っている研究・報告もあるが,通常臨床においてはすべて別の人が行う事が多い.また,病理の切り出しにおいても,部分切除と乳房切除の標本では切り出し断面が異なり,それを見越して造影超音波検査を行っていないとそもそも断面が大きく異なってしまう.
3-1の標本の収縮に関しては,病理の腫瘍径と通常の超音波検査画像(B-mode)とを比較しても,病理の腫瘍径が超音波の腫瘍径よりも小さくなっていることを経験する.そういう場合の扱いをどうするか決めておくことは今後の研究において,重要な事と思われる.
また,2-2の造影MRIや造影CTとの比較を行うなら,そもそも,それらの断面は水平断になってしまう.これらの検査と造影超音波検査の広がりの比較を行うなら,病理の切り出し断面も含めて,造影超音波検査を行う断面をあらかじめ前向きにプロトコールで規定して検討を行う必要がある.
【まとめ】
広がり診断をするにあたっては,造影所見のどこまでを病変部位と判断するかも問題だが,そもそもの前提条件を理解し,適切に診断する必要があると思われる.