Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺2 乳がん広がり診断における造影超音波

(S401)

乳癌病理診断におけるマッピング

Mapping of Intraductal spreading of carcinoma in breast pathology

小塚 祐司

Yuji KOZUKA

三重大学医学部附属病院病理部

Pathology, Mie university hospital

キーワード :

従来,病理診断報告書には詳細な病理組織学的所見が記述的に記載される傾向がある.加えて,近年では癌領域の診断では臨床医から要求される検索項目が増加している.癌取り扱い規約,癌登録,治療のための最新のガイドラインに沿った報告が求められるが,多くの病理医は自らの専門領域外の臓器診断も担当しており,必要最低限の記載に留めたいという欲求もある.乳癌の病理診断に関しては,Oncotype DXのような多遺伝子発現解析を重視し,病理医は悪性の診断だけを行えばよいという,神様のような臨床医もいる.しかしながら実際には,乳癌の診断では病変の大きさ・広がり,規約あるいはWHO分類に基づく組織型,波及度(脂肪織・皮膚・大胸筋など),乳管内進展の程度,脈管侵襲の程度,断端評価,異型度評価(Nottingham分類,規約の核Grade),ホルモン受容体やHER2発現状況,増殖因子であるKi-67 indexの判定などのバイオマーカー評価,腫瘍内浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes/TIL)の程度,リンパ節の転移状況(有無だけでなく,マイクロ転移やIsolated tumor cellsのような微小転移の検索も含む)などの記載が求められる.癌の広がりを示す詳細なスケッチ,マッピングは,奇異な風習と皮肉る腫瘍内科医もいるものの,画像診断医や乳房温存手術を行う外科医,放射線照射を行う治療医には強く求められる.ただしマッピングの要望は乳癌に限ったものではなく,膵癌や前立腺癌のようないわゆる実質臓器や,管腔臓器でも早期胃癌のように肉眼観察では確認しづらい癌でも要求される.マッピングを厭わない病理医も,一つの臓器の依頼を受けると他科の例外が許されなくなり,かなりの負担増である.また完全なマッピングのためには,腫瘍部分の全割とその検討が必要になるが,現状では診療報酬の担保がなされておらず,その費用は病理部門の負担となっている.病理組織検体をどのように取り扱うかは,臨床からの要望,臨床と病理間の意思疎通,病理部門の人的・経済状況など複合的な要素によって異なってくる.副病変の取り扱いを含むマッピング実施には,病理検査体制の整備と病理医の理解,相互の情報交換が必要である.定型的な乳癌検体の取り扱いを示すことは難しいが,自施設での検体の取り扱いを紹介する.