今吉 由美, 堀 優, 吉田 芽以, 亀井 桂太郎

Yumi IMAYOSHI, Yu HORI, Mei YOSHIDA, Keitarou KAMEI

¹大垣市民病院医療技術部診療検査科形態診断室, ²大垣市民病院外科

¹Department of Clinical Research, Ogaki municipal hospital, ²Department of Surgery, Ogaki municipal hospital

キーワード :

【はじめに】
造影超音波検査（以下CEUS：Contrast enhanced ultrasound）において染影のはみ出しは乳癌を示唆する所見の一つとされている．しかし，染影のはみ出しが病理組織学的に癌の広がりを反映しているかどうかは明らかではない．仮に乳癌の周囲組織への浸潤や進展を反映しているのであれば乳房造影超音波検査は術前の広がり診断法として期待される．当院の経験症例を用い造影所見と病理組織との対比を含め検討する．
【方法】
使用機器は東芝メディカルシステムズ社製Aplio400，PLT-704SBT/805ATプローブを用いた．造影断面は病理の切り出し方向に合わせた最大面を選択した．ソナゾイドは推奨量を投与し，はじめの1分間は断面を固定して観察した．
【症例1】
66歳女性．硬癌の症例，乳房部分切除術施行．ER・PgR陽性，HER2陰性．Bモードの腫瘤径15mm，病理組織の腫瘍径18mm，CEUSの染影範囲は22mmであった．病理組織と対比すると，CEUSではみ出して染影を認めた部分には，おおむね腫瘍細胞の浸潤が認められたが，一部，腫瘤から延びるように血管影が見られた部位では腫瘍細胞がなく正常乳管のみであった．
【症例2】
68歳女性．硬癌の症例，乳房全摘術施行．ER・PgR陽性，HER2陰性．Bモードの腫瘤径13mm，病理組織の腫瘍径17mm，CEUSの染影範囲は22mmであった．CEUSではみ出して染影を認めた部分を病理組織と対比すると，腫瘍細胞の浸潤部とその外側に正常乳管が見られる部位では，CEUSではその全体が染影され境界の区別は困難であった．しかし時間輝度曲線（TIC）では輝度差を認め，鑑別の可能性は示唆された．また，間質と血管が多く見られるが腫瘍や乳管は認めない部分においても染影のはみだしが認められ，この場合の染影の判断についてはさらに検討を要する部分であると考える．
また，この症例は主腫瘤とは離れた別の部位に小結節を認めており，CEUSで強い染影を認めたため穿刺を行い，癌と診断され全摘術となった．
【考察・結語】
病理組織と対比すると，Bモードと組織の肉眼的な腫瘤像とは大きさ範囲がほぼ一致していた．造影時の特に横方向へのはみ出しは浸潤や管内進展を示唆し，その染影範囲の同定は重要であるが，このはみ出す範囲径は，組織での顕微鏡的な腫瘍の範囲径と必ずしも一致せず，やや大きめに計測されることがある．これは分解能の問題もあれば，実際の腫瘍の広がり方向と切り出し面のずれなども要因ではないかと思われる．CEUSで染影される範囲は血管の多寡を評価するものであるため，病理組織的には癌の浸潤や進展を反映する一方，単に血管の多さを反映するだけのこともある．真の腫瘍の広がりとそうではない部分の鑑別をどうするかは様々な点からの検討が必要と考える．