Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺1 Dense breastに対する補助的乳房超音波検査

(S398)

乳がん超音波検診が対策型検診に導入されるまでのプロセスは?

What process is needed for introducing US screening for breast cancer in population based screening ?

中山 富雄

Tomio NAKAYAMA

国立がん研究センター社会と健康研究センター

Center for Public Health Sciences, National Cancer Center Japan

キーワード :

【目的】
わが国でのがん検診は,胃・子宮に始まり,肺・大腸・乳房と臓器を増やしてきたが,当時は疾病の重要さのみで検診への導入が決められ,有効性評価は後付けで行われてきた.しかし「がん検診無効論」というメディアの論調もあり,当該がんの死亡率減少効果という意味での有効性評価が必須となってきている.乳がん超音波検診については,40歳代を対象としたJ-START研究でマンモグラフィーに追加することで,感度の有意な上昇が示されている.今後わが国での対策型検診に導入されるまでのプロセス・必要な研究について議論する.
【方法】
平成16年度から組織された「科学的根拠に基づくがん検診ガイドライン」作成チームがこれまで行ってきた6つの臓器のがん検診ガイドライン作成のルールを整理する.
【結果】
開始年度に「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順」をまとめた.この手順は主に米国のUSPSTFや英国のNICEの形式を踏襲するものである.Systematic reviewで評価すべき当該がんの死亡率減少効果については,直接的証拠と間接的証拠の両者を採用している.直接的証拠とはランダム化比較試験やコホート研究・症例対照研究などで死亡率減少効果をアウトカムとした研究を指し,間接的証拠とは発見から死亡率減少までの各プロセスの効果を示す証拠の一群を指す.すなわち新しい検診手法により早期発見率が向上するというのは単一では評価されないが,早期治療による進行がん罹患の減少や,検診・精密検査による不利益・治療による不利益などのフレームとすべて併せて死亡率の減少が確実で不利益が利益に比して問題にならない大きさであることが示されれば,間接的証拠となりうる.ただし間接的証拠は,多種多様な条件で行われた研究の「いいとこ取り」になりかねないことから,その採用については無作為化比較試験で有効性が示された既存の検診手法との比較が可能な場合に限定している.
【結論】
乳房超音波検診は,現時点では感度・特異度のみが報告されており,間接的証拠の一部と言わざるを得ない.ランダム化比較試験の死亡率減少効果が示されるまでの間に行うべきは,超音波検診により発見された症例の精密検査や治療での不利益・生存率,超音波検診受診者集団での進行がん罹患率の推移などについて,質の高い研究が要求される.