Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺1 Dense breastに対する補助的乳房超音波検査

(S398)

乳がん手術例におけるマンモグラフィ所見と超音波所見の比較検討

Comparison of mammography findings and ultrasound findings in breast cancer surgery cases

金澤 真作, 岡住 慎一, 神森 眞

Shinsaku KANAZAWA, Shinichi OKAZUMI, Makoto KAMMORI

1国際医療福祉大学市川病院乳腺・甲状腺外科, 2東邦大学医療センター佐倉病院外科

1Department of Breast and Thyroid Surgery, International University of Health and Welfare Ichikawa Hospital, 2Department of Surgery, Toho University Sakura Medical Center

キーワード :

【はじめに】
高濃度乳房のためマンモグラフィ検査(MMG)陰性となる乳がんの存在が問題となっている.すでに超音波(US)単独の任意型検診が行われており,対策型乳がん検診でUS併用の試みも進められている.一方,乳がん術後の経過観察には,MMGのみが推奨されている.しかし,両側乳がんが全乳がんの3%前後に存在し,その内,異時性両側乳性がんは60%程度と報告されている.
【目的】
乳がん手術症例のMMGとUSを後方視的に検討し,背景乳腺の違いや組織型による病変検出状況の違いを検討した.
【対象と方法】
2015年6月から2017年5月までに手術が施行された原発性乳がん症例で,MMGとUSの両方の検討が可能であった66症例.男性乳がん症例は除外した.両側乳がんが11例含まれ,9例が異時性,2例が同時性であった.検討対象は患側乳房とし66症例,68乳房で検討を行った.MMGおよびUSは,後方視的に再読影した.
【結果】
年齢中央値は63.3歳(32.5~89.0歳).乳房の構成は,脂肪性5乳房(年齢中央値84.9歳,MBI中央値22.1,全68乳房の7%),乳腺散在26乳房(年齢中央値65.5歳,MBI中央値23.9,全68乳房の38%),不均一高濃度33乳房(年齢中央値61.0歳,MBI中央値21.2,全68乳房の48%)および高濃度4乳房であった(年齢中央値44.3歳,MBI中央値21.5,全68乳房の7%).MMGでは,20乳房(全68乳房の29%)でカテゴリー(C)3以上の所見を認めなかった.USでは,全乳房でC-3以上の所見を認めた.MMGでC-3以上の所見を認めなかったMMG陰性乳房の内訳は,乳腺散在7乳房(乳腺散在の27%),不均一高濃度11乳房(不均一高濃度の33%),高濃度2乳房(高濃度の50%)であった.病変の存在部位は,全68乳房のA領域5乳房7%,B領域11乳房16%,C領域38乳房57%,D領域3乳房4%,E領域11乳房16%,MMG陰性乳房でA領域2乳房10%,B領域4乳房20%,C領域5乳房25%,D領域4乳房20%,E領域5乳房25%だった.組織型は,全68乳房で乳頭腺管癌30乳房44%,充実腺管癌11乳房17%,硬癌13乳房19%,非浸潤性乳管癌5乳房8%,浸潤性小葉癌6乳房9%,粘液癌1乳房1%,パジェット病1乳房1%,アポクリン癌1乳房1%で浸潤部の最大径は中央値22mm(4~140mm),MMG陰性乳房で乳頭腺管癌9乳房45%,充実腺管癌1乳房5%,硬癌4乳房20%,非浸潤性乳管癌2乳房10%,浸潤性乳管癌1乳房5%,粘液癌1乳房5%,パジェット病1乳房5%,アポクリン癌1乳房5%で浸潤部の最大径は中央値13mm(8~40mm)であった.同時性両側乳がんの1例2乳房はMMG陰性乳がんであった.また,異時性両側乳がん9乳房のうち3乳房はMMG陰性乳がんであった.
【まとめ】
年齢が増すに従い,乳腺濃度が低下する傾向がみられた.乳腺濃度上昇に伴いMMG陰性乳がんの割合が増加していた.浸潤径の小さな病変はMMG陰性となりやすい傾向があった,特にE領域ではMMG陰性となりやすかった.MMG陰性乳房は全乳房の29%を占め,異時性両側乳がんの33%はMMG陰性であった.乳がんの組織型とMMG陰性乳房に関連は見られなかった.
【結論】
乳がん手術症例の検討でも,高濃度乳房にUSを併用することは有用であると思われた.乳がん術後にも,MMGにUSを併用した経過観察は有用であると思われた.