Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺1 Dense breastに対する補助的乳房超音波検査

(S397)

高濃度乳房の判定と超音波検査の位置づけについての考察~乳腺含有率推定の試みより

Assesment of breast density and indication of breast ultrasound-quantification of breast density

野間 翠, 松浦 一生, 板本 敏行, 鳥本 愛弓, 難波 浄美, 石蔵 麻里, 斉藤 浩正

Midori NOMA, Kazuo MATSUURA, Toshiyuki ITAMOTO, Ayumi TORIMOTO, Kiyomi NANBA, Mari ISHIKURA, Hiromasa SAITO

1県立広島病院消化器・乳腺外科, 2県立広島病院臨床検査科, 3県立広島病院放射線診断科

1Department of Gastrointestinal and Breast Surgery, Hiroshima Prefectural Hospital, 2Laboratory for Clinical Investigation, Hiroshima Prefectural Hospital, 3Department of Radiology, Hiroshima Prefectural Hospital

キーワード :

【背景】
マンモグラフィ(MG)検診の問題点である高濃度乳房対応に関して乳腺超音波(US)は有用な検査となると考えられるが,高濃度乳房の判定そのものが読影者の主観に左右されるという問題がある.乳腺密度測定ソフトや,MG装置に搭載のシステムにより乳腺含有率を定量化し高濃度乳房を判定する技術も開発されているが,本邦における適切なカットオフ値については検討が待たれる.乳腺の構成は乳腺と脂肪の割合に対応するため,日本人の脂肪の含有率の低い薄い乳房では相対的に高濃度と判定されている可能性があり,病変の検知の可否からその判定基準を定める必要があると考えられる.
当院では乳腺含有率が既知のファントムを使用しFPD(Flat panel detector) MGの画像から条件別に乳腺含有率の推定を行う方法を開発した.この方法で得られる乳腺含有率のデータを用い,病変の検知可否から高濃度乳房の判定について検討を行ったので報告する.
【対象と方法】
2014.8月~2016.12月の間に当院で手術を行った原発性乳癌患者のうち,当院でMGを施行し乳腺含有率の測定が可能であった220名を対象とした.このうち明らかに検知可能である石灰化を有する病変・乳腺外の病変・5cm以上の病変を除き,条件付きMG検知群(n=116)と非検知群(n=29)で乳腺含有率の比較を行い,Dense breast判定のための適切なCut-Off値の設定を試みた.
また圧迫乳房厚と乳腺含有率の関係と,それらがMGおよびUSの病変検知に及ぼす影響について検討を行った.
【結果】
条件付きMG検知群/非検知群の比較では乳腺含有率が有意に非検知群で高く,(28.5±22.2 v.s. 44.8±26.8%,p<0.001),ROC曲線を用い乳腺含有率22.5%に Cut off値を設定した.このCut off値を用いると220例中130例(59.1%)がDense breastと判断され,これらにUSを追加すると仮定すると,非検知乳癌29例中22例がカバーされる結果となった.
乳房厚と乳腺含有率との検討では,乳房厚30mm未満の症例はほとんどがDense Breastと判定されるのにも関わらずMGでの検出率は20例中17例(85.0%)と高値であった.乳房厚30mm以上ではDense Breastと判定された症例59例中39例(66.1%)とMG検出率が低下した.
また,スクリーニングUSで非検知の病変は220例中20例であったが,うち11例が石灰化病変で残りの9例は比較的小さな病変であったが,いずれも乳房厚30mm以上,乳腺含有率22.5%未満のいわゆる脂肪性乳房内に存在した.
【考察】
ファントムを使用したFPD MGでの乳腺含有率の推定値を用いてDense Breastの判定を試みた.乳腺含有率は病変の検知の可否に大きく影響するが,各々の乳腺の構造も反映しており,病変検知との関係に更なる理解を深めることが望まれる.特に乳房の薄い症例は脂肪含有率が少なく見かけ上乳腺含有率が高く算定される傾向があるが,必ずしも病変の検出率は低くないためこれらを一律にDense Breastと判定しないような判断も必要であると考えられる.