Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺1 Dense breastに対する補助的乳房超音波検査

(S396)

マンモグラフィ検診における補助的超音波検査の意義

Significance of Adjunctive Ultrasonography in Mammography Screening

鈴木 昭彦

Akihiko SUZUKI

東北医科薬科大学乳腺内分泌外科

Breast and Endocrine Surgery, Tohoku Medical and Pharmaceutical Unversity

キーワード :

 乳がん検診において,死亡率減少効果のエビデンスが科学的に証明された唯一の検診法はマンモグラフィであるが,高濃度乳房では感度が低下することが知られており,対応が急務である.超音波検査は高濃度乳房であっても腫瘤の検出感度が低下しないため,マンモグラフィの弱点を補完するモダリティとして期待される.わが国では2007年から「マンモグラフィ検診における超音波検査の有効性を検証する比較試験(J-START)」が行われており,40代女性に対する補助的超音波検査の可能性が明らかにされてきた.その結果,通常のマンモグラフィ検診を行った群では感度77.0%(95%CI:70.3-83.7)だったのに対し,超音波検査を加えた介入群では感度が91.1%(95%CI:87.2-95.0)に上昇し,有意差を持って介入群の感度が高かった.その一方で,要精検率は通常のマンモグラフィ検診群では8.8%,介入群における要精検率は12.6%であり,超音波検査の追加によって要精検率は3.8%上昇したと報告されている.乳がん検診の意義を死亡率減少効果のみに帰着するのであれば,補助的な超音波検査にその意義があるか否かは現時点では不明であり,長期にわたる観察の結果を待たなければならない.ただし,超音波で発見される乳がんは腫瘤径の小さい浸潤がんが効率よく発見されることがデータ上示されており,死亡率以外の点で社会的に得られる利益も小さくはないと考えられる.
 今回,日本乳癌学会のガイドラインの改定にあたり,検診・診断に関するCQとして,マンモグラフィ検診における補助的超音波検査の意義が取り上げられた.J-STARTで行われた用手的な超音波検査と,近年開発の進んでいるABUS(Automated Breast Ultrasound Screening; 乳房用自動超音波検査)に関してそれぞれ取り上げており,その利点,欠点を文献的に考察している.Dense Breast対策としての超音波検査の位置づけを,J-STARTから得られた実数と,文献からのエビデンスを紹介し,乳がん検診における超音波の可能性に関して解説したい.