Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
シンポジウム 乳腺2 ここまで見える“乳房超音波”

(S393)

乳房超音波診断に貢献する超広帯域超音波イメージング技術

Ultra wide-band Imaging Technology for Ultrasound Diagnostic of Breast

酒井 智仁, 谷口 哲哉, 水野 隆, 大沼 憲司, 小笠原 正文

Tomohito SAKAI, Tetsuya TANIGUCHI, Takashi MIZUNO, Kenji ONUMA, Masafumi OGASAHARA

コニカミノルタ株式会社ヘルスケア事業本部開発統括部超音波開発部

Healthcare Business Unit, Konica Minolta, Inc.

キーワード :

【はじめに】
乳房超音波診断において,Bモード像は組織形態を把握する上で非常に重要である.その描出性能は現在もなお進歩し続けており,より微細な構造物を描出できるようになっている.本報では病理組織像に迫るBモード高画質化を実現するプローブ,及び超音波送受信技術について解説する.
【超広帯域高周波プローブ】
高解像化に必要となる高周波成分を含む広帯域信号を送受信するため,プローブ構成要素を材料や加工法まで検討し開発した.
音響レンズは,シリコーンゴム基材に充填するフィラーの高比重化,ナノ粒子化,高分散化することによって,生体適合性や音響インピーダンス整合性を維持しながら低減衰化を達成した.従来レンズに比べ,特に高周波帯での減衰抑制に優れ,高感度化に寄与している.
音響整合層は,一般的には1~2層で構成されるが,複合材料の物性制御,及び接着剤等の副資材まで考慮した高度な接着技術により更なる多層化を実現し,音響インピーダンスを緩やかに変化させることで透過効率,及び帯域特性を向上させた.
これらの技術により,高周波帯では困難であった比帯域100%を超えるプローブを実現した.
【超音波送受信技術:Triad-Tissue Harmonic Imaging】
上述したプローブの広帯域性能を最大限に活かすための超音波送受信技術がTriad-Tissue Harmonic Imagingである.広帯域化したことで,従来は困難であった3種の異なる周波数成分を同時に送信することが可能となり,多くの非線形成分を発生させることができるようになった.多種の周波数成分が打ち消しあうことなく有効利用するために,送波信号のみならずプローブ特性まで高度に摺り合わせた位相制御を施した.結果として,広帯域信号を効率良く受信し,画像化することで優れた距離分解能を実現した.さらに高次高調波と和音・差音成分が深度方向に順次発生するように送波の周波数・振幅を設計することで,浅部から深部まで均一な画像を得ることが可能となった.
【結語】
超広帯域高周波プローブとこれを活かす超音波送受信技術:Triad-Tissue Harmonic Imagingについて紹介した.これら最新技術により得られる高画質Bモード像は,表層から深部まで均一な高画質を供し,乳房内組織の描出に好適であると考えている.これらの技術が乳房超音波診断に貢献することを期待する.