Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
シンポジウム 乳腺2 ここまで見える“乳房超音波”

(S392)

乳房における超音波診断装置の開発とReal-time Tissue Elastographyの発展

Development of ultrasound diagnosis scanner and Real-time Tissue Elastography in breast

脇 康治, 村山 直之, 初田 亜哉, 桑山 真紀

Koji WAKI, Naoyuki MURAYAMA, Masaya HATSUTA, Maki KUWAYAMA

株式会社日立製作所ヘルスケアビジネスユニット

Healthcare Business Unit, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【背景】
エラストグラフィの実用化は,2003年に日立メディコ(現在の日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット)がReal-time Tissue Elastography(以下RTE)として,世界に先駆け製品化したことが始まりであり,現在では,各社からストレインエラストグラフィとシアウェーブエラストグラフィが製品化され,乳腺,肝臓を中心に臨床応用が進んでいる. 一方,同じ分類のエラストグラフィであっても,各社信号処理や表示方法の異なる技術で製品化されている背景もあり,2013年EFSUMB とJSUM から 2015年にはWFUMBから,エラストグラフィガイドラインが制定されている.
 RTEは,ストレインエラストグラフィに分類される技術であり,外部からの加圧もしくは,生体内部の拍動・不随意運動による変位を用いて,組織のひずみを画像化する技術である.Bモードをベースとした送信により得られる受信信号からひずみを描出しているため,高い分解能を有し,形態情報に沿った硬さ情報を描出可能である.
またRTEは,開発当初より,病理像を意識した硬さ情報を追求し,空間フィルタ,カラーマップ,半透明表示などを最適化しており,結果として,形態情報との対比をベースとしたTsukuba Elasticity Scoreなどのスコアリング手法が,広く活用されている.
【開発技術】
近年,臨床現場において,手技依存性を低減するために,No Manual Compression(以下NMC)を主体とした撮像手技が行われるようになってきた.従来のRTEは,ある程度の変位があり,一定方向に連続的な変位が得られる手技が最も安定した画像が得られる描出アルゴリズムであったが,NMCの様に,変位が微小で,安定して一定方向の変位を得る事が難しい場合は,撮像にある程度の経験を要していた.
そのため,RTEの画像構成方法を見直し,微小な組織変形であっても,安定して画像が得られる描出アルゴリズムを開発した.本描出アルゴリズムは,変位の大きさではなく,画像の経時的均質性を評価するものであり,微小変形下でも,プローブ方向に向かう変位フレームを効果的に検出し,表示することが可能である.これにより,経験の少ない検査者においても再現性の高い画像を得ることを容易にすると共に,微小変形下での撮像が容易なため,より細部の硬さ情報を描出することが可能になったと考える.
【まとめ】
2017年春に上市した超音波診断装置ARIETTA 850においては,上記のNMC撮像技術に加え,新しいRTE自動化技術も搭載し,FLR(脂肪と病変のひずみ比)による硬さ指標が,最低限の操作で行えるようになっている.またフォーカス依存性を大きく低減するビームフォーミング技術eFocusing等,新世代のBモード表示技術も搭載しており,精細なBモード画質とRTEの組み合わせにより,従来よりも,効果的に検査をして頂けると考える.
近年,韓国における多施設前向き研究により,Bモードにカラードプラ,エラストグラフィを付加する事で,特異度が向上し,非悪性病変に対する不要なバイオプシーを避けることができたとの報告[1]がされており,エラストグラフィの重要性はますます高まると考えられる.
我々は,今後も,Bモード,カラードプラ,エラストグラフィの改良を続け,乳房検査に寄与する超音波診断装置を開発していく所存である.
[1]Lee SH, Chung J, Choi HY et al. Evaluation of Screening US-detected Breast Masses by Combined Use of Elastography and Color Doppler US with B-Mode US in Women with Dense Breasts: A Multicenter Prospective Study.Radiology 2017 Nov;285(2):660-669.