Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
シンポジウム 乳腺1 Bモード,エラストグラフィ,バスキュラリティ評価を駆使した乳房超音波検査-Comprehensive Ultrasoundで病理像を想定しよう

(S389)

Comprehensive Ultrasound

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学総合医療センター総合外科学

General Surgery, Kawasaki Medical School, General Medical Center

キーワード :

現在の乳房超音波検査には,基本となるB mode,血流を簡易的に評価できるDoppler Mode,硬さを評価できるElastography mode,超音波造影剤を使い微細な血流も観察できるContrast-Enhanced Ultrasound modeがある.B modeは超音波検査の本質であり,B modeで病変を検出できて初めて診断をすすめることが可能となるので最も重要である.しかし,組織インピーダンス差による超音波反射を利用した形態情報のみであり,特異度は高くない.近年,超音波診断装置のB mode性能が著しく向上し,この病変検出能力が大幅に向上した.その結果,診断力が向上し,いいことばかりのようであるが,精密検査施設と同様に,乳がん検診に超音波検診が導入されてきたことから話しがややこしくなる.つまり,画像分解能の向上により,以前の超音波検診では気がつかれることのなかった,本来治療の必要が無いような微小病変が多く検出されるようになってきたのである.この様な病変は当然,検診レベルでは十分な鑑別ができないため,要精査となり,生検などの侵襲の高い検査を受ける症例の増加を招いている.
さらに,B modeを含め,超音波検査の精度自体が,本質的に装置の性能よりも,検査者の技術に強く依存する.その為,装置の性能を知り,性能を引き出す検査技術を持つことこそが,高価な装置を使用することよりも,多くの教科書を読むことや講演をきくことよりも,何よりも重要であるのだが,ほとんどの検査者が高い撮像技術をもっているとは言い難い.
この性能を引き出す技術の精度管理では,B modeでは探触子にできるだけ圧を加えず,可及的垂直に皮膚に当てながら撮像することが重要であることが判明している.幸い,この撮像法の精度管理は他のすべてのモード(Doppler,Elastography,Contrast-Enhanced Ultrasound)に共通する手法であるため,検査時にはこの撮像法を強く意識することが勧められる.言い換えれば,B modeをきちんと撮像できれば他のモードも十分に性能を引き出せていることになる.また,B mode,Doppler,Elastographyは同じ探触子操作で,スイッチを切り替えるだけで,瞬時に切り替えが可能であるため,3モードを切り替えて使いこなしながら,病変の検出,診断をすすめることが可能である.演者はこの3モードをリアルタイムに切り替えながら高い撮像精度で診断をすすめる手法をcomprehensive ultrasoundと命名し,論文発表させてもらった.
 comprehensive ultrasoundでは,情報量が増え,診断ロジックで病理像をイメージできるため,乳房超音波検査の癌確信度の向上と良性確信度の向上,検査者の労力,心的負担の軽減にも寄与する.たとえば,Massを見つけた場合,B modeで診断できなければ,穿刺,生検することになるが,一回の超音波検査で数多くのMassが見つけられることも多く,各々のMassに対して生検することになり,検査者の労力,患者の侵襲度は小さなものではない.癌の確信度が高いものを生検し,良性確信度の高いものは見過ごしたいものである.このような場合,comprehensive ultrasoundで,Elastography → Dopplerと検査を追加していけば,ひとつひとつの病変に対して確信度が向上し,時間も労力も節約できる.
 超音波診断のエンドポイントは,病理診断を予測することである.comprehensive ultrasoundでは,形態,硬さ,血流情報を複合して,病理診断を予測することができる.本セッションでは,この病理像の予測にについて総論を解説したい.