瀧聞 浄宏

Kiyohiro TAKIGIKU

長野県立こども病院循環器小児科

Pediatric Cardiology, Nagano Children's Hospital

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Fontan手術は，解剖学的および機能的単心室や二心室修復が不可能な先天性心疾患症例のチアノーゼの消失を目的とした外科的な修復の手段として，確立されたものである．歴史的には心耳-肺動脈吻合が行われてきたが，現在では，心外導管を用いたTCPCが主流である．Fontan循環では，体静脈系が直接，肺動脈に連結するためポンプを用いずに肺循環を行うこととなり，静脈圧が常に高く，かつ低心拍出状態という特異な血行動態にある．Fontanルートや肺動脈の狭窄，肺血管抵抗の上昇，房室弁閉鎖逆流，大動脈弁逆流，大動脈縮窄による後負荷上昇，心収縮能低下などの要因で容易に静脈圧が上昇，うっ血と低心拍出を助長する．Fontan術後の心エコーおいて，①体静脈から肺動脈に向かう，上大静脈，下大静脈，フォンタンルート，肺動脈のドプラ血流パターンや血流速度の観察：通常，血流のパターンは，層流を示して吸気で血流速度が増大する．呼吸変動の低下，逆行性血流，狭窄部でのモザイク血流などは異常所見である．②右心耳-肺動脈吻合されたFontanの場合の心房内血栓：高い静脈圧のために右心房が拡大し，血流が著しく滞留するため，不整脈の発生誘因であるとともに，血栓形成の増悪因子である．経胸壁で，拡大した右房内を確認できない場合は，径食道心エコーが有用である．③大動脈縮窄，大動脈狭窄，弁逆流：大動脈再建ではNorwood法やDams-Kaye-Stansel法などが代表的で，旧肺動脈弁が体心室の動脈弁となるので弁逆流の発現に注意が必要である．④体心室の弁逆流：特に体心室が右心室となる内臓臓器錯位症候群では共通房室弁逆流が，左心形成症候群では三尖弁逆流が問題となり，予後を左右する．⑤体心室の心機能：主心室が右室か，左室か，または両心室かによって心室機能は異なることが予想されるが，心エコーによる収縮，拡張機能の明確な指標は未だない．症例ごとに心室短軸断面や四腔断面の内腔変化率，Tei Indexなどの径時的変化を追うことは重要である．両心室もつ症例では，心室間の同期不全が心機能低下をもたらす場合もある．⑥チアノーゼの存在：心房間遺残短絡，体静脈から心房に還流する異常血管，肺動静脈瘻などによる右左短絡に基づくもの，fenestration術などが原因となりコントラストエコーが有用である．以上が重要な評価ポイントで，本レクチャーでは実際の症例を交えてわかりやすく概説したい．