新居 正基

Masaki NII

静岡県立こども病院循環器科

Department of cardiology, Shizuoka Children's Hospital

キーワード :

先天性心疾患における術後評価の重要なタイミングには以下の3つが挙げられる：①手術室における術直後経食道心エコー検査．これは術直後の問題点の評価を手術室で行うことにより，手術を更に継続することが必要かどうかを判断する．この際には執刀医と共に総合的な判断を行う必要がある；②術後退院前検査：外来へ移行する前に問題点の評価を行う．これによって投薬の調整や，将来的な再介入の計画など外来での管理方針を立てる；③術後遠隔期における外来での評価：術後遠隔期に再介入を要する病変に対する評価を行う．Jatene手術は半月弁上で大動脈と肺動脈の両大血管を入れ替える（スィッチ）ことと，冠動脈を新しい大動脈へ移動させる手術を指す．完全大血管転位症で主に施行されるが，両大血管右室起始症のTaussig　Bing奇形や，修正大血管転位症におけるダブルスイッチ術の際にも本手術が行われる．術後早期の重大な合併症として，移動した冠動脈の狭窄や閉塞による心筋虚血が挙げられるが，術直後の経食道心エコーにて心室壁運動異常を認めた場合には，第一に疑う合併症である．その他，大血管スイッチの際の縫合線に関連した大動脈弁や肺動脈弁の弁上狭窄，またはLecompte法により肺動脈が前方に引き出されたことにより生じる末梢肺動脈狭窄なども，術後比較的早期に問題となる所見である．その他，新大動脈の拡大等に伴った右室流出路狭窄や，大動脈弁閉鎖不全なども術後中長期的に再介入が必要となる合併症である．本発表では，Jatene術後の合併症について概説を行うとともに，心エコー検査による評価のポイントについて，実際の症例を交えて解説を行う．