Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 小児
シンポジウム 小児3 先天性心疾患:術後の心エコー

(S382)

ファロー四徴症:術後の心エコー

Echocardiographic assessment after surgical repair of tetralogy of Fallot

高橋 健

Ken TAKAHASHI

順天堂大学小児科学教室

Department of Pediatrics, Juntendo University Faculty of Medicine

キーワード :

ファロー四徴症(TOF)は,チアノーゼ性心疾患の中では最も頻度が多い複雑心奇形の一つですが,医療の発達に伴い生存率は大幅に改善しました.毎年約1万人の出生に先天性心疾患を認め,90%以上が成人に達します.そのため2020年には,20歳以上の先天性心疾患患者が20歳未満の患者よりも多くなると予測されています.今後多くの心内修復術後の患者が循環器内科を訪れ,心エコーも行うことになり,それに備える必要があります.
TOFとは,①肺動脈狭窄・漏斗部狭窄,②大動脈騎乗,③心室中隔欠損および④右室肥大で定義され,漏斗部中隔の発生異常により,漏斗部中隔は右室の前方かつ右方に変位します.その結果,漏斗部下の心室中隔との間に隙間が生じ,心室中隔欠損が形成されます.また偏位した漏斗部中隔により右室流出路狭窄を生じ,大動脈は右側に編位し,心室中隔上に移動(大動脈騎乗)します.本症に対する心内修復術は,心室中隔欠損の閉鎖と右室流出路狭窄の解除からなります.
この様な複雑心奇形の心エコーを行うにあたって,幾つか重要なポイントがあります.
ポイント①:心内修復術前の解剖を理解することが必要です.“術後の心エコー”を行う時点では,肺動脈狭窄や心室中隔欠損は修復された状態にありますが,正常な心臓の構造になる訳ではありません.数々の術後合併症は,術前のTOF独特の心臓の構造の上に成り立ちます.そのため,術前の状態の理解が重要となり,豊富な画像を用いて解説を行います.複雑心奇形に対する心臓超音波法では,体が小さい患児においては,剣状突起下からの解剖学的像が,構造を理解するために大変有効であり,必須の方法となります.以上より,循環器内科の外来では普段目にすることのないこの手法も用いて,TOFの解剖について解説を行います.
ポイント②:各種心内修復術の特徴の理解も必要です.TOFに対する心内修復術は,時代により変化を遂げて来ました.そのため,成人症例においては,各手術法を理解した上で,超音波を行う必要があります.
ポイント③:心内修復術後の合併症の理解が必要です.長期フォローにおいて,肺動脈逆流症に伴う右室機能不全を中心に,肺動脈狭窄,大動脈弁閉鎖不全,残存心室中隔欠損など,多岐に渡る合併症が存在します.そこで治療方針決定のために心エコーが果たす役割は大変大きく,心内修復術後の合併症の評価時の具体的なポイントを解説します.
ポイント④:右室および左室の心機能低下が,術後の予後に大きく影響を与えます.しかし複雑心奇形では心機能評価が難しく,様々な制約があります.その中で有効な心エコーを用いた心機能評価を行う時に知っておくべき知識を解説します.また幾つかの予後規定因子に関する新しいデータも提示します.
以上の内容により,TOFの術後心エコーにおいて,明日から臨床の現場に役立てられる様なレクチャーを行います.