英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 小児
シンポジウム 小児1 小児超音波検査のpitfallー正常?異常?ー
(S374)
脳エコー検査のpitfall-正常?異常?-
Pitfall of brain ultrasonography-normal? abnormal?
市橋 光
Ko ICHIHASHI
自治医科大学附属さいたま医療センター小児科
Pediatrics, Saitama Medical Center Jichi Medical University
キーワード :
小児の臓器は発達途上にあるため,成人とは異なる形態を呈する場合がある.未熟児の脳では脳溝があまり形成されておらず,滑脳症様になっている.また,相対的に脳室(特に側脳室後角)が大きい.
小児において,正常か異常かの判断に迷うものの一つに,胎生期の遺残物がある.脳エコー検査で問題になる胎生期の遺残物は透明中隔腔とVerga腔である.透明中隔腔は左右の側脳室前角の間に存在し,在胎36週前後で消失する.そのため,未熟児の脳エコーを行うと高率に認められるし,成熟新生児でも認めることがある.Verga腔は矢状断では第三脳室の後方に,冠状断では両側脳室後角の間に認められる.在胎30週前後で消失する.透明中隔腔やVerga腔は時に消失せずに成人にも存在することがある.その多くは無症状であるが,きわめて稀にMonro孔を圧迫して水頭症を呈した報告もある.
側脳室は,正常でも左右差がある(左が大きいことが多い).断層像での脳室の面積比が2倍程度までは正常と考えてよい.
脳室の大きさは,正常では側脳室体部,第三脳室幅はともに3mm前後である.10mm未満であれば,経過観察としている.頭囲拡大を主訴とする乳児の脳室は大きいことが多いが,10mmまでは経過観察としている.
脳室上衣下出血は比較的多く認められる所見であるが,発達に影響を及ぼすことはない.嚢胞となり,脳室内に吸収されて消失する.同様に,側脳室前角周囲の小嚢胞も発達に影響することはない.
アーチファクトでは,強い反射体である頭蓋骨による鏡面現象や多重反射を認めることがある.