Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科3 双胎の妊婦健診における超音波検査のあり方

(S368)

一絨毛膜双胎におけるハイリスク状態をより早期に捉えるための妊婦健診の間隔を考える

Optimal interval between ultrasonographic evaluations for the detection of critical complications in monochorionic twin pregnancies

川口 晴菜

Haruna KAWAGUCHI

大阪母子医療センター産科

Obstetrics, Osaka Women's and Children's Hospital

キーワード :

【目的】
一絨毛膜双胎(MD双胎)妊娠は,双胎間輸血症候群(TTTS),一児の胎児発育不全(sIUGR)や一児死亡後の生存児への影響等の特有の問題が存在するハイリスク妊娠である.そのうちTTTSやsIUGRは,胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)や人工早産等の介入によって児の予後が改善される可能性があり,超音波検査による早期診断が重要となる.2週毎の超音波検査による胎児のモニタリングが推奨されることがあるが,それでも予期せぬ重篤な合併症の管理に難渋することがある.本研究では,MD双胎の妊婦健診における超音波検査の間隔の違いによるTTTSや胎児死亡(FD)などの予期せぬ重篤な合併症の頻度を明らかにすることで,望ましい超音波検査の間隔を検討する.
【方法】
当センターにおける妊娠16週以降のMD双胎の妊婦健診において,2011年までは毎週の,2012年以降は2週毎の超音波検査を原則としていた.羊水量や胎児推定体重の差を認めてハイリスクと判断された場合には,超音波検査の頻度を1週毎以上に増やし,より精密なフォローアップを行った.2005年1月から2015年4月の期間に当センターで妊娠16週未満から管理を開始し,かつ妊娠16週時点で両児が生存していたMD双胎を対象として,無心体双胎や致死的な胎児疾患は除外した.2005年から2011年に毎週の超音波検査にて管理したものをGroup A,2012年以降に隔週の超音波検査にて管理したものGroup Bとした.直近の超音波検査で異常を認めずハイリスクではないと判断していたが,次の受診時に重篤な合併症(TTTSまたはFD)であった症例を予測不可能例とし,一方で通常の健診においてあらかじめハイリスクと判断されていたもののうち重篤な合併症に至った症例を予測可能例とした.両群間で予測不可能例および予測可能例の頻度を比較した.また,両群間のTTTSとFDの診断週数,およびTTTS診断時点のQuinteroの重症度についても検討した.統計学的検定は,ウィルコクソンの順位和検定,カイ二乗検定を使用した.本研究は,施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象393人のうち,8例を除外した385例にて解析した.Group Aは285組,Group Bは100組であった.予測不可能例は5%(20例;TTTS14例,FD6例)であった.Group Aの4%(11例)に比して,Group Bは9%(9例)と有意に高頻度であった(P=0.046).予測可能例は7%(28例;TTTS20例,FD8例)のうち,Group A 7%(19例)とGroup B 9%(9例)で差を認めなかった.また,TTTSやFDの診断週数が妊娠26週以降であったものは,予測不可能例では10/20(50%)であったのに対し,予測可能例では3/28(11%)と有意に少なかった.(P=0.003).また,TTTSに関しては,予測不可能例はGroup Aでの5例(2%)に比べてGroup Bでは9例(9%)と高頻度であった(P<0.001).予測可能例のTTTSは,85%がFLPを施行されたが,予測不可能例では29%であった.Quintero 重症度は両群間で差を認めなかった.(P=0.08).
【考察】
MD双胎において,1週あるいは2週間毎に超音波検査を施行しても,急にTTTSやFDとなる症例が5%も存在した.また,予測不可能例の半数は妊娠26週以降に発症しており,全期間を通しての注意深い観察を要することが判明した.本研究で予測不可能例とした症例のリスクを早期に把握するためには,隔週より毎週の超音波検査が望ましいかもしれない.しかし,毎週の超音波検査によって児の予後を改善できるかどうかは不明であり,さらなる検討が必要である.