英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 胎児心エコーとカラードプラ
(S365)
カラードプラの有用性:カラードプラが診断に不可欠な心血管構築異常からの検討
Effectiveness of Color Doppler in fetal echocardiography
加地 剛, 吉田 あつ子, 米谷 直人, 苛原 稔
Takashi KAJI, Atsuko YOSHIDA, Naoto YONETANI, Minoru IRAHARA
徳島大学病院産科婦人科
Obstetrics and Gynecology, Tokushima University Hospital
キーワード :
【目的】
胎児心エコーでは母体を経由して小さな胎児心臓を観察するため,新生児の心エコーに比べ詳細な心血管構築の評価は難しいことも多い.一方で胎児期は肺に空気がないため,心臓を多方向から観察できる.カラードプラは角度依存性であるため,多方向からアプローチできるメリットは大きいと考えられる.当院では胎児心エコーに際して,スクリーニングおよび精査ともにカラードプラを使用している.今回,カラードプラが診断に不可欠であると考えられる心血管の構築異常について当院での胎児診断の現状について検討した.
【方法】
H26年からH29年に当院の胎児心エコーで診断された症例のうち,①心内の異常として心室中隔欠損(単独),②血管系の異常,③冠動脈の異常の3つについて検討した.なお右側大動脈弓などの大動脈弓自体の異常と肺静脈還流異常は除外した.
【結果】
①心室中隔欠損(単独例)は31例が胎児診断されていた.膜様部17例,筋性13例,膜様部+筋性部1例であった.偽陽性例はなかったものの,胎児期には見逃された偽陰性例は少なくとも3例あった.
②血管系の異常として,右鎖骨下動脈起始異常が11例(単独4例),左肺動脈右肺動脈起始(PA sling)1例,左腕頭動脈肺動脈起始1例が診断された.
③冠動脈の異常としては左冠動脈左房瘻1例,純型肺動脈閉鎖における類洞交通2例,完全大血管転換症において走行異常1例が診断されていた.
【結論】
カラードプラが診断に不可欠と考えられる心血管構築異常も胎児診断されていた.カラードプラを使うことでより詳細な心血管の構築評価ができると考えられる.ただし,見逃された症例も少なからず存在する可能性があること,また診断例には筋性部の心室中隔欠損など出生前に診断する意義が乏しいものも含まれており,カラードプラの出生前検査としての有用性までは言及できない.