Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 胎児心エコーとカラードプラ

(S364)

胎児心エコー検査に要する検査時間の調査

Investigation of examination time required for fetal echocardiography

高村 奈緒美, 田口 知里, 田形 千寿子, 佐藤 静香, 今村 梢, 川瀧 元良

Naomi TAKAMURA, Chisato TAGUCHI, Chizuko TAGATA, Shizuka SATO, Kozue IMAMURA, Motoyoshi KAWATAKI

1川崎協同病院検査科, 2産婦人科菅原病院超音波検査室, 3窪谷産婦人科検査室, 4レディスクリニックフォレスタヴェルデ超音波検査室, 5野田医院, 6神奈川県立こども医療センター新生児科

1Laboratory, Kawasaki Kyodo Hospital, 2Ultrasound laboratory, Sugawara Hospital, 3Laboratory, Kubonoya Obstetrics and Gynecology, 4Ultrasound laboratory, Ladies Clinic FORESTA VERDE, 5Noda Clinic, 6Neonatology, Kanagawa Children's Medical Center

キーワード :

【はじめに】
一次医療施設での胎児超音波検査は,胎児心臓の観察だけではなく,胎児の全体を観察しながら心臓の観察も行っている.胎児心臓の観察にはBモードだけではなくカラードプラ,パルスドプラも活用したスクリーニングが行われており,精度の高いスクリーニングを行うことを目指している.今回は一次医療施設での胎児スクリーニングに要する時間を調査し,カラードプラの意義を考えたい.
【対象・方法】
4名の胎児超音波検査者(臨床検査技師,助産師)で各10症例,合計40症例を調査対象とした.ローリスクの妊婦を含めた全妊婦を対象に,妊娠20週前後,30週前後の胎児超音波スクリーニング検査にて記録開始時から終了時までDVDまたはUSBに記録し,①胎児計測を含めたスクリーニング検査全体に要した時間,②心臓スクリーニングに要した時間,③心臓スクリーニングでカラードプラを使用した時間,④③の中で肺静脈血流観察のためにカラードプラ・パワードプラを使用した時間をそれぞれ計測した.また,妊娠週数(妊娠20週前後,妊娠30週前後),胎盤位置,母体BMIによる検査時間を調査した.
【結果】
検査に要した平均検査時間は,①胎児スクリーニング検査に要した時間は9分48秒,②心臓スクリーニングに要した時間は3分19秒,③心臓観察にカラードプラを使用した時間は1分31秒,④肺静脈血流観察に要した時間は44秒であった(以下,各項目を①~④とする).妊娠週数による平均検査時間は,妊娠20週前後では①10分16秒,②3分31秒,③1分37秒,④43秒であり,妊娠30週前後では①9分13秒,②3分4秒,③1分24秒,④45秒であった.胎盤位置による平均検査時間は,前壁に位置した場合は①9分28秒,②3分16秒,③1分30秒,④45秒であり,前壁以外(後壁,側壁,底部)の場合は①10分11秒,②3分23秒,③1分33秒,④43秒であった.母体BMIが最も高値だった症例はBMI32で検査時間は①15分43秒,②4分31秒,③2分0秒,④25秒,最も低値だった症例はBMI17.5で検査時間は①7分32秒,②3分19秒,③2分5秒,④33秒だった.
【考察】
日本胎児心臓病学会から2006年に作成された「胎児心エコーガイドライン」のレベルⅠスクリーニングはすべての胎児を対象に,妊娠20週前後と30週前後の2回実施することを推奨している.カラードプラは必ずしも必要としていない.国際産婦人科超音波学会(International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology : ISUOG)のガイドラインではカラードプラは必須とされていないが,日常的なスクリーニングに追加することを推奨している.
胎児スクリーニング時間はおおよそ10分間であり,胎児心エコー検査時間は3分19秒であった.妊娠週数による検査時間は妊娠20週前後よりも妊娠30週前後の方が検査時間が短く,胎児が成長することで心構造の描出も明瞭になり,検査時間が短くなったと考えるが,肺静脈観察においては検査時間の差はなかった.胎盤の位置,母体BMIの違いによる心臓観察時間に差はなかった.カラードプラを使用することで検査時間が長くなることはなく,むしろ胎児心臓観察においてはカラードプラを使用することにより効率的に観察することが可能であり,多くの情報を得ることができると考える.また,肺静脈血流の観察をスクリーニングで行うことで,先天性心疾患のなかでもスクリーニングが難しいとされる総肺静脈還流異常症を胎児期に疑い,高次医療機関へ紹介することが可能になる.
【まとめ】
胎児心臓観察にカラードプラを使用することで,精度が高く,効率的な胎児スクリーニングを行うことができる.