英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科1 子宮頸管長計測の意義を問い直す
(S360)
日本における子宮頸管長計測開始時の経験から
Experiences of sonographic assessment of the cervix during pregnancy for 30years in Japan
沖津 修
Osamu OKITSU
つるぎ町立半田病院産婦人科
Obstetrics and Gynecology, Tsurugi Municipal Handa Hospital
キーワード :
子宮頸部を超音波で評価し,早産予知に役立てようとする頸管超音波検査(cervical ultrasonography: CU)の臨床研究は1980年代に始まった.当初は経腹プローブを用いた研究であったが,経腟プローブの普及に伴い,経腟超音波が主体となった.この後,90年代にマイルストーンとなる論文が相次いで発表された.評価の主なパラメーターは頸管の長さ,すなわち頸管長であるが,内子宮口の開大(funneling)についても重要な所見とみなされるようになった.またこの頃,日本からもいくつかの論文が欧文で発表された.本邦のものを含む論文の知見により,早産の予知だけでなく,予防につなげようとする試みも後に行われたが,全体的には必ずしも目覚ましい成果を得ることなく現在に至っている.2000年代初頭までに蓄積された知見としては,①妊娠週数に関わらず頸管長が25mm以下で早産のリスクが高くなること,さらに頸管長は短ければ短いほど早産しやすく,かつより早く早産する.②CUは早産予知に関して有用な情報を提供するが,CU単独では予知成績に限界がある.③頸管機能不全症の検査として子宮底圧迫法が有用である.④頸管縫縮術が有効なサブグループをより明らかにすることが今後の課題である.また,新たなパラメーターの開発・応用にも期待したい.
一方,本邦の臨床応用としては,1994年にCUが頸管無力症に対して保険適応となり,さらに2008年には切迫早産にも保険適応となった.この経緯が本邦のCU普及につながったと推察される.CUは比較的簡便な手技で行える検査ではあるが,正確な頸管長測定,あるいは的確な早産予知を行うためには,統一した基準に基づき,いくつかの基本的な観察手技を習得する必要がある.また,データの解釈にも注意を要する.その手技や解釈についても本講演で解説する.