Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
シンポジウム 産婦人科3 胎児MRI・CTの現状と未来

(S357)

胎児MRI撮像技術の進歩:詳細な画像評価にむけて

Progress of fetal MRI technique for detail imaging evaluation

丹羽 徹

Tetsu NIWA

東海大学医学部専門診療学系画像診断学

Diagnostic Radiology, Tokai University School of Medicine

キーワード :

 胎児MRIは,現在,MRIの高画質化,高速化など装置の進歩に伴い,臨床での普及が進んできている.
 MRIは通常,撮像中に被検者が動くことにより,著しく画質が低下する.よって,胎児MRIでは,胎児が撮像中に動くこと,母体の呼吸や腸管などの動きがあることにより,通常の撮像法では画質が著しく低下する.このため,胎児MRIではsingle shot 法を中心として撮像が行われてきている.single shot法は高速で撮像する手法で,動きのある胎児に対してもある程度の画質を提供する.比較的高速な撮像法であることから,胎児の脳と脊髄,胸部と腹部,頸部と胸部など多部位にわたる病変の評価も一検査内で可能になってきている.一方,single shot法は通常のMRIに比べ,コントラストが低く,画像のボケも生じる.したがって,胎児MRI診断は,基本的には比較的粗大な形態異常の拾い上げが中心となっており,MRIの信号域でのコントラストでの病変評価は難しい場合がある.近年,gradient echo法を基にしたSSFP法やbalanced field echo法の画質が向上し,薄いスライスでの撮像可能になってきている.これにより,奇形などの形態異常がより細かく評価できるようになってきた.また,3D撮像が比較的短時間で行えるようになってきており,容量解析や多断面再構成での付加的な情報の提供も可能となってきた.その他,研究報告では,機能画像や動きの評価など新しい手法も試みられている.
 胎児MRIの撮像に関しては,安全性の観点からの検討もされてきている.すなわち,MRIの静磁場,RFパルスによる電磁波の影響などが考慮される.現在のMRI装置では,被検者に対する電磁波照射は制限下にコントロールされており,基本的には安全に検査が行えるようになっている.胎児MRIの適応は,従来より妊娠第2三半期以降となっている.妊娠早期では,安全性が確立されていないのみならず,胎児が小さく画像評価が困難であることから適応にならない.ただし,母体の子宮や卵巣疾患の精査が必要な場合はこの限りでない.通常の胎児MRIでは,撮像された児に生後に問題が生じていないとされる報告もあり,基本的には問題がないとする考えが一般的に受け入れられており,世界的にも広く施行されている.
 本講では,胎児MRIの現状や新しい撮像法に触れつつ,胎児MRI診断の有用性や限界点,今後の展望などに関して述べる.