Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
シンポジウム 産婦人科3 胎児MRI・CTの現状と未来

(S357)

胎児超音波検査と胎児CTによる評価 -胎児骨系統疾患フォーラムの活動を通じて-

Fetal ultrasonography and fetal CT: Works of "Japan Forum of Fetal Skeletal Dysplasia"

上妻 友隆, 吉里 俊幸, 堀之内 崇士, 品川 貴章, 横峯 正人, 牛嶋 公生

Yutaka KOZUMA, Toshiyuki YOSHIZATO, Takashi HORINOUCHI, Takaaki SHINAGAWA, Masato YOKOMINE, Kimio USHIJIMA

久留米大学医学部産婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, Kurume university school of medicine

キーワード :

超音波断層法は,胎児の異常を非侵襲的かつ早期に認識できるモダリティーとして,産婦人科医にとって無くてはならない.先天性心疾患をはじめとした内臓異常や,3D/4D超音波による外表奇形の診断技術は格段に向上している.一方,超音波断層法による胎児骨系統疾患の出生前診断には限界がある.本来,骨系統疾患はX線診断が原則であるのに対し,超音波という異なるモダリティーでの診断を余儀なくされるからである.即ち,超音波では骨表面の音響反射しか捉えられず,骨全体の情報が把握できないため,骨の描出とその評価が不完全となるのである.また,骨系統疾患の頻度は他の形態異常と比較しても低く,かつ多岐にわたり(現行の国際疾患分類では42グループ,436疾患と定義),医療者側の知識や経験不足も正確な診断が困難となる原因である.
こうした背景から胎児骨系統疾患の出生前診断の精度向上を目的として,2008年に西村玄先生,澤井英明先生,室月淳先生らによって胎児骨系統疾患フォーラムが結成された.放射線被曝の懸念から胎児3D-CT(以下胎児CT)は躊躇されがちであるが,胎児CTによる胎児骨の評価は超音波と比較しても精度が高く,近年におけるCT技術の進歩と当フォーラムの活動・研究により,より低被曝での胎児CTが可能となった.今回,頻度が比較的高い(数万例に1例)骨系統疾患から概説する.
タナトフォリック骨異形成症(TD)はFGFR3遺伝子変異が原因で,頻度は1-3万例に1例である.遺伝形式は常染色体優性遺伝(AD)を示す,以前は致死性骨異形成症と呼称されていたが,必ずしも致死性ではないため名称が変更された.胎児超音波では妊娠早期から長管骨,特に大腿骨の著明な短縮がみられ,I型では受話器様変形と呼ばれる弯曲が特徴である.II型の大腿骨は弯曲が目立たず,ほとんどの症例で頭蓋骨にクローバーリーフ変形がみられる.診断には超音波断層法が非常に有用と考えている.羊水過多を伴う症例が多いのも特徴で,3D/4Dで胸郭の低形成や腹部の膨隆,あやつり人形肢位といった特徴を捉えやすい.
骨形成不全症(OI)はI型コラーゲン遺伝子変異(COL1A1またはCOL1A2)が原因であり,頻度は2-3万例に1例程度である.多くの分類があるが,特にSillence II型とIII型は重症度が高く,妊娠早期から長管骨の著明な短縮がみられる.超音波のみではTDとの鑑別が難しいこともある.胎児CTでは骨折部位の仮骨化や数珠状肋骨,頭蓋骨骨化不全などの特徴がみられ,鑑別診断に重要となる.軽症であるI型とIV型は,周産期良性型低ホスファターゼ症との鑑別が困難なことがある.
軟骨無形成症(ACH)はTDと同じくFGFR3遺伝子異常で遺伝形式はADをとるが,TDより予後は良好である.妊娠20週台半ばまでは長管骨の発育が正常と変わらないないし正常下限程度であるが,妊娠後期において大腿骨の伸長が停滞するのが特徴的である.ACH疑い症例に対し胎児CTを行うかどうかは議論がある.
今回のシンポジウムでは実際の症例を提示しながら,超音波と胎児CTから得られる所見の特徴について説明していきたい.発表に際して利益相反はない.