Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1 卵巣腫瘍

(S348)

3D超音波による卵巣腫瘍の評価

3D ultrasound in assessment of adnexal tumors

金西 賢治, 秦 利之

Kenji KANEISHI, Tosiyuki HATA

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University

キーワード :

我が国の卵巣がん患者は年々増加しており,手術や化学療法,近年は遺伝子変異に着目した分子標的薬による治療戦略なども試みられているが,進行癌での再発率は高く,最近の10年生存率は改善していないのが現状である.約70%はIII期以上の進行がんの状態で診断されることから,腹水により膨満した腹部などの臨床所見と従来の2D超音波による典型的な画像,腫瘍マーカーなどを含む理学所見を総合的に判断することで,良悪の鑑別診断を行うことは,経験をつんだ産婦人科医にとっては決して難しいことではないと考えられる.しかしながら,卵巣腫瘍自体が小さな初期像や内膜症性嚢胞との混在例など,鑑別困難なものもあり,従来の2D超音波画像による形態診断では,Dopplerなど血流情報を併用しても,診断感度は90%程度に留まるとの報告もあり1. 2),境界悪性卵巣腫瘍などの鑑別もふくめ,より早期からの正確な診断法の開発が望まれているのが現状である.これまでにも我々は3D超音波画像による卵巣がん診断について,その画像の特徴や良悪の鑑別における有用性について報告してきた2-5).これらの特徴として以下のような画像があげられる.
3D Ultrasound surface rendering:
2Dと同様に形態的な評価法であり,主に不整に肥厚した隔壁,不整な乳頭状の突出,充実部分の有無や内腔壁の不整変化を2Dよりもより視覚的に明瞭に確認することができる.現状では,診断精度は報告者により異なっている.
3DPD(power Doppler), HD-flow ultrasound:
種々の悪性腫瘍で血流の変化は多く報告されており,3D画像に腫瘍内の血管走行の変化や,血管の増加および血管分岐などの特徴的な所見により良悪性の鑑別を行う.また血管の密度や血管径の変化および蛇行などの不整な血管走行も悪性の所見と考えられる.また,VOCAL histogram analysisを用いた腫瘍充実部分のvascularityおよびblood flowによる評価もある.
HDlive:
新たな3D超音波画像renderingにより任意の位置から仮想光源を当てることで陰影をつけ,従来の三次元超音波画像よりも,さらに明瞭に肉眼所見に近い画像を描出する技術であるが,3D超音波の応用である特性から,完全な充実性腫瘍の鑑別は困難であるが,主に嚢胞性部分が主体を占める卵巣腫瘍において充実部分の形態の観察には有用であると考えられる.
今回我々は,良性,悪性付属器腫瘍の2D, 2D color/power Doppler, 3D power DopplerおよびHDlive超音波像について以前に報告した画像に新たなものも追加して提示し,その画像の特性や良悪性の鑑別診断における有用性を報告する.
1. Valentin L et al. Ultrasound Obstet Gynecol 2006; 27: 438-444
2. Hata T et al. J obtet. Gynecol Res 2011; 37: 1255-11268
3. Hata T et al. J Med Ultrasonics 2014; 41: 181-186
4. Dai SY et al. Obstet. Gynecol. Res 2008; 34: 364-370
5. Kanenishi K et al. Donald School Joumal of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology 2014; 8:229-246 .