Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器5 膵臓 慢性膵炎の超音波診断(高輝度膵含)

(S338)

高輝度膵の病理組織学的背景と膵液瘻についての検討

Histopathological background of hyperechogenic pancreas and examination of pancreatic juice fistula

小屋 敏也, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 須原 寛樹, 田中 浩敬, 酒井 大輔, 西尾 亮, 後藤 秀実

Toshinari KOYA, Yoshiki HIROOKA, Hiroki KAWASHIMA, Eizaburou OHNO, Takuya ISHIKAWA, Hiroki SUHARA, Hironori TANAKA, Daisuke SAKAI, Ryo NISHIO, Hidemi GOTO

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学診療部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya university hospital

キーワード :

【目的】
高輝度膵は,その原因として病理組織学的には脂肪化や線維化との関連が指摘されているが,確立されておらず加齢,肥満,生活習慣病に加えて,膵癌との関連も報告されている.高輝度膵の本態を調査するため当院における高輝度膵症例の背景因子,病理組織学的脂肪化,線維化との関連につき等~低輝度膵症例と比較検討を行った.また,高輝度膵の背景と考えられている脂肪化は膵液瘻のリスクになると報告されていることに対して,線維化は軽度なほど膵液瘻のリスクが高くなるという相違が認められる.当科の検討にてEUS elastography(EUS-EG)ヒストグラム解析による術前膵液瘻予測の有用性を報告しているが(Kuwahara T et al.),高輝度膵と膵液瘻の関係は不明であり,その関係についての検討を行った.
【対象】
2004年9月から2015年8月までに膵切除術前にEUS-EGが施行された82症例のうち切除膵の脂肪化,線維化につき評価が可能であった79症例(高輝度膵35例,低~等輝度膵44例)を対象とし後方視的に解析を行った.また,膵頭部切除を行った59症例(膵液瘻群19例,非膵液瘻群40例)を膵液瘻の検討対象とした.
【方法】
高輝度膵は肝臓よりエコー輝度が高いものと定義し,脂肪肝を認める場合は脾臓よりエコー輝度の高いものとした.また評価領域は切除領域内に含まれるものとした.①高輝度膵群と等~低輝度膵群に分け背景因子(性別,BMI,糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝の有無,疾患,血液検査所見),線維化,脂肪化の程度を比較した.線維化の病理学的な評価はKlppel分類,脂肪化の評価はOlsen分類に基づきNormal/Mild/Moderate/Severeの4段階に分類した.②膵液瘻群と非膵液瘻群に分け,背景因子,EUS-EG Mean値を比較した.EUS-EGは主膵管を避けて背景膵実質にROIを置き,得られたEUS-EG画像をStrain Histgram解析を行い,5回測定しMean値を算出した.
【結果】
①年齢中央値および四分位数範囲(IQR:interquartile range)は高輝度膵群67(61-73)歳が低~等輝度膵群62.5(53.3-71)歳と比べ有意に高かった(P=0.03).高輝度膵群は脂肪化Normalが5例(14.3%)に対し,低~等輝度膵群では33例(75%)の結果であった(P<0.001).②膵液瘻群の膵癌症例2例(11%)は,非膵液瘻群21例(53%)より少なく(P=0.04),線維化がNormalの症例は膵液瘻群が10例(53%)と,非膵液瘻群9例(23%)より多かった(P<0.001).また,Mean値は膵液瘻群85.4(46.7-123.3)であり,非膵液瘻群55.6(31.4-120.6)より有意に高かった(P<0.001).脂肪化Normal(P=0.29),高輝度膵(P=0.58)については両群に差を認めなかった.
【考察】
脂肪置換は主として高輝度膵の原因であると考えられるが,脂肪置換Normalの症例でも高輝度膵が認められ線維化も高輝度膵の原因となりうると考えられた.また,膵液瘻と脂肪置換の間には関連が認められなかったが,線維化が軽度な症例,Mean値が高い症例は膵液瘻が多かった.高輝度膵の中に線維化と脂肪化が混在していることが,1つの病態として確立することを困難にしていると考えられた.
【結論】
高輝度膵には組織学的な脂肪化のみならず線維化も関与していると考えられた.高輝度膵と膵液瘻には有意な関係は認められなかった.