Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器5 膵臓 慢性膵炎の超音波診断(高輝度膵含)

(S336)

超音波内視鏡で診断困難な慢性膵炎を背景とした膵癌の特徴

The clinical features of pancreatic cancer patients misdiagnosed as chronic pancreatitis with endoscopic ultrasonography

中岡 和徳, 橋本 千樹, 吉岡 健太郎

Kazunori NAKAOKA, Senju HASHIMOTO, Kentarou YOSHIOKA

藤田保健衛生大学肝胆膵内科

Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University School of Medicine

キーワード :

【背景】
慢性膵炎(CP)を背景とした膵癌(PC)は診断に苦慮する場合がある.一方,超音波内視鏡(EUS)は膵疾患の検査で優れている検査のひとつである.
【目的】
EUS所見で慢性膵炎像を呈し膵癌の診断が困難であった症例についてその特徴と診断経緯を明らかにすること.
【対象,方法】
2006年4月から2017年11月の間,CPやPCを疑われEUS検査でCPと診断した172例を後方視的に検討した.
【検討項目】
EUSでPCと診断出来なかったEUS所見の特徴,腫瘍部位,膵癌の診断に至った検査,stage,最終診断でのCP群(C群)とPC群(P群)間で性別(M/F),年齢,CEA(ng/ml),CA19-9(U/ml)膵管拡張(有/無),膵石(有/無)を検討した.
【結果】
EUS所見は慢性膵炎確診所見:61例, 準確診所見:65例, 早期慢性膵炎所見:46例であった.最終診断がPCであった症例は13例あった.PC13例中CPの確診所見は7.7%(1/13),準確診所見は84.6%(11/13),早期慢性膵炎所見は7.7%(1/13)で認めた.腫瘍部位はhead/body/tail=12/1/0,stageは,Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ=0/1/10/2.PCの診断方法はERP細胞診 2例,EUSFNAB 1例,PET-CT 1例,MDCT 4例,MRI 1例で,経過観察(平均観察期間・年)でPCが出現した症例が4例あった.ERPは59例,EUSFNABは10例施行したが,ERP細胞診の偽陰性5例,EUSFNABの偽陰性1例であった.手術治療を5例に施行した.摘出標本に関しては全症例で背景に線維化が強く慢性膵炎像を認めた.性別(C群:132/27,P群:7/6,P=0.01),CA19-9値(C群:43.1,P群:645.6,P=0.01),膵石(C群:58/101,P群:1 /12,P=0.03),主膵管の拡張(C群:100/59,P群:12/1,P=0.03)に有意差を認めた.
【考察】
EUSでPCと診断に至らなかった症例は全症例腫瘤が描出されなかったが微小な膵癌ではなかった.本研究の問題点は後方的な観察研究であるが,背景に慢性膵炎を認める場合EUS画像では膵腫瘤の同定が困難であり特に膵石を認めないが主膵管の拡張を認める症例には注意を要する必要がある.