Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器5 膵臓 慢性膵炎の超音波診断(高輝度膵含)

(S336)

当院における慢性膵炎のEUS所見

EUS findings of chronic pancreatitis in our hospital

伊藤 泰斗, 高山 敬子, 木下 普紀子, 大塚 奈央, 赤尾 潤一, 長尾 健大, 田原 純子, 清水 京子, 徳重 克年

Taito ITOH, Yukiko TAKAYAMA, Fukiko KINOSHITA, Nao OTSUKA, Junichi AKAO, Kenta NAGAO, Junko TAHARA, Kyoko SHIMIZU, Katsutoshi TOKUSHIGE

東京女子医大病院消化器内科

Gastroenterology, Tokyo Women's Medical University

キーワード :

【目的】
慢性膵炎は代償期,移行期,非代償期に分けられ,軽症急性膵炎や再発性急性膵炎の背景因子としての慢性膵炎が存在することがある.慢性膵炎の画像診断としては腹部US,MRCP,CT,逆行性膵管造影(endoscopic retrograde pancreatography; ERP)などの所見から確診,準確診,早期に分類される.近年,US,CT,MRIで検出できない早期慢性膵炎に対してEUSによる診断項目が2009年慢性膵炎臨床診断基準に設定された.EUSは高解像度で至近距離から膵を観察できるため,膵管のみならず膵の実質変化も詳細に観察することができ,他の検査では捉えられないより早期の慢性膵炎変化の診断が可能である.しかし,EUS所見と慢性膵炎の他の診断項目因子とは不一致のことがしばしばある.
当院において慢性膵炎あるいは早期慢性膵炎と診断された患者のEUS所見と飲酒量,糖尿病の有無,急性膵炎の既往,血液生化学所見について統計的解析を行い,EUSの有用性の検討を目的とした.
【対象と方法】
当院2014年2月から2017年12月にかけて反復する上腹部痛発作あるいは検診で血中膵酵素値異常を指摘され,EUSで早期慢性膵炎あるいは慢性膵炎と診断された患者54例を慢性膵炎臨床診断規準2009のEUS所見における確診,準確診,早期慢性膵炎に群別した.各群での飲酒量,糖尿病の有無,急性膵炎の既往,血液生化学所見,Rosemont分類と慢性膵炎診断基準2009のEUS診断基準との関連につき統計的に解析した.3群間の有意差検定にはKruskal-Wallis U検定を用い,有意差があった場合にはBonferroniの多重比較検定を行った.
【結果と考察】
54名のうち男性は37名,女性は17名で,平均年齢は58.0歳であった.確診は24名,準確診は5名,早期慢性膵炎は25名であった.飲酒量(純アルコールg/day)の平均は確診例89g/day,準確診例27.5g/day,早期慢性膵炎30.1g/dayで確診例で多い傾向がみられた(p=0.08).糖尿病の有無,急性膵炎の既往の有無はいずれも有意差はなかった(糖尿病: p=0.424, 急性膵炎: p=0.464).血液生化学検査については白血球数,ヘモグロビン,血小板数,アルブミン,アミラーゼ,リパーゼ,CRP,BT-PABA試験について検討したが各群で有意差は認められなかった.Rosemont分類と慢性膵炎臨床診断基準2009のEUS所見との比較ではRosemont分類でconsistent with CPと判定されたものは全例確診例で,suggestive of CPと判定されたもののうち3例が準確診,8例が早期慢性膵炎で,indeterminate for CPと判定された者のうち2例が準確診,17例が早期慢性膵炎であった.(p<0.001)
【結論】
当院における検討では飲酒量,糖尿病の有無,急性膵炎の既往の有無,血液生化学所見でEUS所見における臨床診断との関連は認められなかった.また,慢性膵炎臨床診断基準2009における早期慢性膵炎はRosemont分類でのindeterminate for CPに該当すると考えられているが,今回の検討では良い相関が認められた.ただし,今回の検討における早期慢性膵炎と判定されたものの平均年齢は59.24歳であり,飲酒量は30.1g/dayであった.60歳以上においては年齢とともにEUS異常所見が増加する傾向が見られるという報告もあり,現時点では組織学的線維化を表すとされる慢性膵炎のEUS所見が加齢による変化か否かを区別することは困難であり,over-diagnosisにならないよう慎重な診断が必要である.