Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器4 胆嚢癌を見直す

(S333)

胆嚢腺筋腫症に合併する胆嚢癌の特徴

Characteristic of gallbladder cancer concomitant with adenomyomatosis

金 俊文, 高橋 邦幸, 林 毅, 矢根 圭, 潟沼 朗生

Toshifumi KIN, Kuniyuki TAKAHASHI, Tsuyoshi HAYASHI, Kei YANE, Akio KATANUMA

手稲渓仁会病院消化器病センター

Center for Gastroenterology, Teine-Keijinkai Hospital

キーワード :

【背景】
胆嚢腺筋腫症(ADM)に合併する胆嚢癌の報告は散見されるが,ADMと胆嚢癌の関係及び発生部位に関しては一定の見解が得られていない.
【目的】
ADM合併胆嚢癌について臨床病理学的に検討する.
【対象】
1997年4月から2017年3月までに切除した胆嚢癌140例のうち,ADMを合併していた17例(12%)を対象とした.年齢は47-81歳(中央値 68歳),男女比は9 : 8.
【検討項目】
1.ADM合併胆嚢癌の臨床的特徴,2.Fundal type(F型)ADM合併胆嚢癌の病理学的特徴,3.Segmental type(S型)ADM合併胆嚢癌の病理学的特徴,4.ADM合併胆嚢癌の画像所見,5.ADM経過観察後切除例における画像所見の変化
【結果】
1.ADMの分類はF型 7,S型 10であった.併存疾患は膵・胆管合流異常 3(18%; F型 2,S型 1),胆石 11(65%;F型 2,S型 9)であり,有症状はF型 1(14%; 腹痛),S型 7(70%; 腹痛 5,倦怠感 1)に認めた.腫瘍マーカー上昇はCEA(≧5.0ng/ml)4,CA19-9(≧37.0U/ml)8に認めた.2.肉眼型はIsp 1(深達度 m),IIa 2(m-RASss,m-RASmp),IIb 1(m-RASmp),結節浸潤 3(si 1,ss 2)であり,腫瘍局在はADMの範囲 6(うち体部側に進展あり 3),ADMから離れた部位 1であった.7例中6例は粘膜側から癌が発生し,うち5例はADM直上粘膜からの発癌と考えられた.一方,1例のみRAS内に隆起性病変を認め,粘膜面の腫瘍量よりも多いことからRAS内発生の胆嚢癌と診断した.3.肉眼型はIIa 2(m-RASss 2),IIb 6(RASss,m-RASmp,m-RASss,mp-RASss,m,mp),結節浸潤 2(ss,se)であった.腫瘍局在はADMから体底部側 9(うち胆嚢全域に進展 3),ADMより頚部側 1であった.10例中9例は粘膜側から癌が発生したと考え, 残り1例はRAS内のみに腫瘍を認め,RAS内発生の胆嚢癌と診断した.4.胆嚢癌の合併を術前に診断し得たのは8例(47%; F型Isp/IIa 3,F型結節浸潤 3,S型結節浸潤 2)であった.F型Isp/IIaの3例では,いずれもEUSにてADMの直上粘膜に隆起性病変を指摘し,CTではADMの直上粘膜に淡い染影効果を伴う隆起性病変として描出されていた.結節浸潤の5例ではUS/EUSで不整な壁肥厚が指摘可能であり,同部位のCTにおける造影態度は早期濃染 3,遅延濃染 2であった.一方,術前診断困難であった9例はF型IIb 1,S型IIb 6,S型IIa 1であり,IIbの術前診断は全例困難であった.5.ADMとして経過観察中に胆嚢癌の合併を指摘したのは4例(24%;全例F型)であり,肉眼型はIIa 2(m-RASss,m-RASmp),結節浸潤 2(全例ss)であった.ADMとしての経過観察期間中央値は32(11-42)ヵ月であり,ADM直上の隆起性病変の出現と壁肥厚範囲の拡大が診断契機となっていた.
【結論】
ADM合併胆嚢癌は切除胆嚢癌の約10%を占めており,F型ではADM直上,S型ではADMから体底部側に認めることが多く,ほとんどは粘膜側からの発癌であった.画像診断に際してはF型ADMではADM直上,S型ADMではADMから体底部側の粘膜側を詳細に観察することが重要である.