Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器4 胆嚢癌を見直す

(S332)

超音波による胆嚢癌検診の評価 -26年間の成績から-

Evaluation of Gallbladder cancer screening by ultrasonography - Based on the results of 26 years screening -

三原 修一

Shuichi MIHARA

みはらライフケアクリニック

Mihara Life Care Clinic

キーワード :

我々は,1983年から日本赤十字社熊本健康管理センターにおいて腹部超音波検診(人間ドック,地域・職域集検)を行ってきた.2009年3月までの26年間の延べ受診者数は1,771,147名(実質398,300名)で,肝細胞癌400例,胆嚢癌170例,膵臓癌155例,肝内・肝外胆管癌58例,腎細胞癌404例,膀胱癌188例など,1,730例(対延べ受診者発見率0.10%)の悪性疾患が発見された.今回,発見された胆嚢癌症例を分析し,超音波検診による胆嚢癌早期発見の成果と超音波所見の特徴について報告する.
【結果】
1)胆嚢癌発見率は対延べ受診者0.01%,対実質受診者0.04%,男女比は74:96(1:1.3),平均年齢は男性66.1歳,女性65.4歳であった.背景因子では,胆嚢癌家族歴3.3%,胆嚢結石合併例30.6%,膵胆管合流異常合併例4.7%,自覚症状を有する者15.2%であった.血液検査では,ほとんどの症例が肝機能異常を認めず,CEA高値例12.0%,CA19-9高値例15.3%であった.153例(90.0%)が切除された.2)切除例の壁深達度(144例)は,m:32例(22.2%),mp:14例(9.7%),ss:88例(61.1%),se・si:10例(7.0%)で,ss例のうち68例(77.3%)およびse・si例のうち5例(50%)はリンパ節転移を認めなかった.進行度(142例)は,Ⅰ:44例(31.0%),Ⅱ:80例(56.3%),Ⅲ:7例(4.9%),Ⅳ:11例(7.7%)であった.3)切除例の5年生存率(Kaplan-Meier法)は87.6%,10年生存率は82.1%と良好であった.また,m,pm,ss癌の5年生存率はそれぞれ100%,88.9%,87.1%,10年生存率は100%,88.9%,77.7%であった.ss癌でもリンパ節転移のない症例の生存率は5年:90.9%,10年:79.4%と良好であった.4)腫瘤が描出された126例の超音波像は,広基性隆起81例(64.3%),有茎性隆起8例(6.3%),壁肥厚型7例(5.6%),隆起と壁肥厚の混合型22例(17.5%),充満型8例(6.3%)であった.また,胆嚢結石保有者における胆嚢癌合併率は0.36%(52/14,396)で,非保有者の0.03%(118/375,305)より12倍高率であった.胆石は胆嚢癌発生のハイリスクとして重要と思われる.膵胆管合流異常は30例発見され,8例が胆嚢癌を合併していた.
【まとめ】
超音波検診は胆嚢癌早期発見の手段として極めて有用と思われる.胆嚢癌を疑う直接所見は,①広基性隆起,②増大する有茎性隆起,③不整な壁肥厚(限局性~広範),④充実エコーの内腔充満,間接所見としては①胆泥,②胆嚢腫大,③胆嚢萎縮,④胆嚢結石(充満結石など内腔観察不十分な場合),⑤膵胆管合流異常が重要と思われる.