Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器2 腹部point-of-care US

(S323)

消化器病診療におけるPOCUSのフレームワーク

Framework of medical examination using Point-of-care ultrasound(POCUS)for gastroenterology

三浦 隆生, 小川 眞広, 古田 武慈, 杉山 尚子, 矢嶋 真弓, 後藤 伊織, 山本 義信, 石田 秀明, 長沼 裕子, 森山 光彦

Takao MIURA, Masahiro OGAWA, Takeshige FURUTA, Naoko SHUGIYAMA, Mayumi YAZIMA, Iori GOTOU, Yoshinobu YAMAMOTO, Hideaki ISHIDA, Hiroko NAGANUMA, Mitsuhiko MORIYAMA

1日本大学病院消化器内科, 2秋田赤十字病院消化器内科, 3市立横手病院消化器内科

1gastroenterology, Nihon University Hospital, 2gastroenterology, Japanese Red Cross Akita Hospital, 3gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
Point-of-care ultrasound(以下POCUS)は,装置の小型化が進む中,超音波診断の専門家に限らず医療従事者全般がベッドサイド・外来で焦点を絞って行う検査として広がりつつある.しかし同じ超音波検査と言っても高性能の診断装置とポケットに入るような小さな診断装置では描出範囲や評価項目などの診断能の差が歴然であることは周知の事実でありPOCUSで微小癌のスクリーニングは馴染まないと考えられる.つまり各診療科によりPOCUSの使用目的も大きく異なるため,各科横断で検査法を決定する前に各領域でPOCUSの意義を見直す必要があると考えられる.そこで今回我々は,消化器病学診療におけるPOCUSの使用状況を顧みてPOCUSのフレームワークを考えて診たので報告をする.
【対象】
対象は当院で消化器医の診療においてPOCUSとして超音波診断を行った症例とした.
【方法】
各超音波診断における標的臓器,観察の目的,診断結果に関して検討した.
【結果】
消化器領域においてPOCUSの使用目的は大きく二分され,①有症状による検査,②既存の疾患に対する経過観察であった.①には重症度判定を含むほか重要な所見の除外診断も含まれており,②には治療後の経過観察や治療の補助やmonitoringも含まれていた.消化器領域においては超音波診断装置の小型化に伴い診察中に触診補助として躊躇無く使用できることが利点であった.実際の疾患では腹水 23%,胆石症 6%,肝硬変症 5%,肝内胆管拡張 4%を占め,臓器としては肝臓 22%,腹腔(腹水)18%,胆嚢 18%であった.
【考察】
今回研修医も含めた検査内容を検討した結果,消化器領域においては対象臓器が多く慢性疾患も存在するためにその場で終結することなく精密検査の適応の有無を決定する役割としての有用性も認めていた.POCUSが超音波の非専門医の間にも診療の一助として有効に活用されるためには検査目標を明確にする事が重要であると考えられ現状のPOCUSに使用できる装置の環境を考えると各臓器の腫大・萎縮の形態診断の評価と超音波が液体の描出に優れるため体腔液の貯留および太い脈管の評価が妥当であると考えられた.各臓器の目標を挙げる(主要評価項目とはしないが観察可能な際には評価する)
腹水・胸水の有無
肝臓⇒急性肝炎・うっ血による腫大,肝不全による萎縮,エコーレベル(脂肪肝による輝度上昇),閉塞性黄疸の有無,肝静脈の拡張の有無,門脈一次分枝の腫瘍塞栓の有無(肝内の腫瘤性病変),
胆囊⇒腫大・萎縮・壁肥厚の有無による胆汁の循環障害の有無(結石・ポリープ)
膵臓⇒腫大・萎縮,膵体部での主膵管の拡張(膵囊胞を含む腫瘤性病変)
脾臓⇒腫大の有無(腫瘤性病変の有無,脾門部の側副血行路の有無)
消化管⇒腸液の貯留の有無,蠕動の状態,壁肥厚の存在,(異常ガス像の存在,狭窄部の確認)
腎臓⇒腫大・萎縮,水腎の有無
大動脈⇒腹部大動脈瘤有無と解離の有無
以下は他領域の疾患の有無の把握
膀胱⇒尿の存在の有無(壁肥厚と内部の隆起性病変)
子宮・卵巣⇒大きな腫瘤性病変の有無
【結論】
POCUSは診療の病態評価として使用される枠組みが必要であると考えられた.