Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器1 膵臓 現行膵癌超音波診断基準の見直し

(S320)

EUS-FNAによる確定診断法の位置付け

Final diagnosis with EUS-FNA in diagnostic strategy for pancreatic cancer

北野 雅之, 糸永 昌弘, 幡丸 景一, 山下 泰伸, 田村 崇, 奴田 絢也, 川路 祐輝

Masayuki KITANO, Masahiro ITONAGA, Keiichi HATAMARU, Yasunobu YAMASHITA, Takashi TAMURA, Junya NUTA, Yuki KAWAJI

和歌山県立医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology, Wakayama Medical University

キーワード :

 膵癌診断において,画像のみでは確定診断に難渋する場合がある.特に,腫瘤を形成しているが炎症性腫瘤・良性腫瘍との鑑別診断が難しい症例,膵管狭窄・膵胞は存在するが充実性腫瘤が認められない症例が存在する.腫瘤形成が認められない場合にはERCPを用いた経乳頭的アプローチにより病理診断が行われる.一方で,腫瘤を形成している場合には,超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNA)により病理診断を行うことが膵癌診療ガイドライン2016で提案されている.
 超音波内視鏡(EUS)では,消化器内視鏡の先端に搭載されている超小型探触子で胃あるいは十二指腸より膵実質を近接して観察できるが,EUS-FNAは内視鏡チャネルの先端部より出てくる穿刺針をリアルタイムに超音波画像で観察しながら,正確に膵内病変を穿刺・吸引することにより組織採取が実施できる検査法である.得られた検体において細胞診あるいは組織診により病理診断が行われる.
 膵癌診断におけるEUS-FNAの感度および特異度はそれぞれ85-89%および96-98%である.,特異度が高いことより不要な手術を避けることができる点で膵癌診断における重要な役割を担っている.腹痛,出血,膵炎等の偶発症は報告されているが,その発生頻度は約1%と低値であり,膵癌の比較的安全な病理診断法として,第一に考慮すべき検査法として認識されている.
 しかしながら,10mm以下の小病変に対する診断能には限界があり,さらに胃から膵体尾部へのEUS-FNA例では穿刺経路に腫瘍細胞が播種するneedle tract seedingの報告が最近散見されるようになってきている.したがって,EUS-FNAは切除不能膵癌の化学(放射線)療法前の病理学的確証,穿刺経路が切除範囲に含まれる膵頭部癌の術前診断には推奨されるが,膵体尾部の膵実質内に限局する小腫瘤に対しては検査前に慎重な検討を有する.このような症例では,ERCPによる経乳頭的アプローチによる病理診断,あるいは複数の画像検査による総合的診断により治療方針を決定することも考慮することが肝要である.