Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器1 膵臓 現行膵癌超音波診断基準の見直し

(S319)

膵腫瘍との鑑別を要する膵炎症性疾患の超音波診断

Role of ultrasonography for the differential diagnosis between pancreatic tumors and inflammatory pancreatic diseases

佐藤 愛, 入澤 篤志, 能登原 憲司

Ai SATO, Atsushi IRISAWA, Kenji NOTOHARA

1福島県立医科大学会津医療センター消化器内科学講座, 2獨協医科大学消化器内科学, 3倉敷中央病院病理診断科

1Gastroenterology, Fukushima Medical University Aizu medical center, 2Gastroenterology, Dkkyo Medical University, 3Pathology, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
「膵炎」は大きく急性膵炎,慢性膵炎(CP),自己免疫性膵炎(AIP)が挙げられるが,のうち,CP(腫瘤形成性膵炎:TFP)や限局型AIPと充実性膵腫瘍との鑑別が問題となる.いずれも低エコー像を基本とし,浸潤性膵管癌では輪郭は明瞭で不整,TFPやAIPでは境界は不明瞭でときに主膵管が腫瘤内を貫く像や点状高エコー等がみられることがあるとされるが必ずしも超音波画像による両者の鑑別は容易ではない.今回,膵腫瘍と鑑別を要した膵の炎症性病変の超音波像を検討することを目的に,超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)で非腫瘍性病変(炎症性病変)と診断した低エコー膵腫瘤(領域)の臨床診断,超音波画像,組織所見についてretrospectiveに検討した.
【対象・方法】
2013年4月~2014年10月に膵癌との鑑別のために膵の低エコー腫瘤に対してEUS-FNAを施行し,2年以上の経過観察をもって非腫瘍性変化(炎症性変化)と診断した8症例(年齢中央値55.5歳, M:F=7:1)について各々の臨床診断,膵疾患に精通した病理医によるEUS-FNA検体の病理評価と超音波画像所見について比較検討した.
【結果】
臨床診断は,A群:CP確診4例(1例の急性増悪症例を含む),B群:早期慢性膵炎疑い2例,C群:1型AIP2例.腫瘤径の中央値21mm(9-30), いずれの症例においても,超音波画像では輪郭は不整かつ不明瞭な部位が認められた. A群:病理所見としては,急性増悪以外の3例で明らかな慢性膵炎像(protein plug, 腺房脱落, 膵管拡張による嚢胞, 小葉内線維化, 小葉外線維化等)を認めた.超音波所見では腫瘤内部のStrandingや石灰化を認めた.急性増悪の1例では,病理的には浮腫を伴う軽度の急性膵炎像を認めた.この症例の超音波所見としては,腫瘤内部エコーは均一底エコーに観察された.
B群:病理的には1例でCP像を呈しておりprotein plugと嚢胞を認めた.別の1例は,軽度の急性膵炎像(軽度好中球浸潤)を呈していた.いずれの症例も超音波所見として,内部エコーは若干の高エコー所見(hyperechoic foci, stranding)を伴ったほぼ均一な低エコーとして観察された.
C群:病理的には,1例で軽度の急性膵炎で腺房消失および小葉内外に線維化細胞の増生が見られ,別の1例では炎症後の線維化像のみを認めたが,いずれの症例においてもAIPの典型像は見られなかった.超音波所見としては,後者で内部にStrandingが認められた.
【結語】
膵炎症性変化からの検討ではあるが,輪郭が不明瞭な部分を腫瘤尾側以外にも有し,内部にいわゆる早期慢性膵炎像含む超音波画像を呈する腫瘤は,炎症性変化である可能性が高いと思われた.