Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器1 膵臓 現行膵癌超音波診断基準の見直し

(S318)

膵癌以外の充実性腫瘍に対する超音波診断

Ultrasonographic findings of pancreatic solid lesion except for pancreatic cancer

金 俊文, 高橋 邦幸, 林 毅, 矢根 圭, 潟沼 朗生

Toshifumi KIN, Kuniyuki TAKAHASHI, Tsuyoshi HAYASHI, Kei YANE, Akio KATANUMA

手稲渓仁会病院消化器病センター

Center for Gastroenterology, Teine-Keijinkai Hospital

キーワード :

膵癌取扱い規約第7版では,膵癌以外の充実性上皮性腫瘍として神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine neoplasm,NEN),Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN),非上皮性腫瘍として平滑筋肉腫,悪性リンパ腫,傍神経節腫などが挙げられている.今回,膵癌以外の充実性腫瘍の超音波所見(US/EUS)について,NENとSPNを中心に概説する.
NENの病理学的特徴は,類円形で小型の核を有する腫瘍細胞が索状に配列し,肉眼的には線維性被膜を伴い境界明瞭な類円形腫瘤を呈する.但し,腫瘍内に嚢胞変性や石灰化を伴うことや,腫瘍径が小さい例では線維性被膜を欠くこともある.また,G2以上の悪性度が高い例では周囲膵に浸潤性発育を示すこともある.US/EUSの典型所見としては,周囲膵と比較し低エコーを呈する輪郭整,内部エコー均一な類円形腫瘤として描出され,主膵管は所見がない,あるいは圧排変形を呈することが多い.しかし,G2以上では輪郭不整,内部エコー不均一,膵管内腫瘍栓を呈することもあり,この場合には膵癌との鑑別が問題となる.EUSは小さなNENの存在診断,多発病変の確認に有用であり,嚢胞変性を伴う場合には腫瘤辺縁の壁肥厚を呈する充実部の存在を捉えることが嚢胞性膵腫瘍との鑑別において重要なポイントとなる.
SPNは若年女性の膵体尾部に好発する腫瘍であり,病理学的には結合性の弱い腫瘍細胞が偽乳頭状構造を形成し,内部に出血や壊死を伴うことが多い.US/EUS所見の特徴としては,輪郭整の類円形腫瘤として描出されるが,内部エコーは石灰化や出血壊死を反映して不均一で無エコー域を伴うことが多い.NENとの鑑別においては,輪郭に一部に直線化を伴うことや,両者とも内部に無エコー域を伴なうが,NENでは均一な無エコーとなるのに対しSPNでは不均一である点がポイントとなる.但し,腫瘤径の小さい場合には,内部均一な低エコー腫瘤で被膜がないため輪郭がやや不整を呈し,小型のNENや膵癌との鑑別が問題となる.この場合には,EUS-FNAを施行して病変部の検体を採取し病理組織を確認することが重要となる.
非上皮性腫瘍は膵外組織から発生した腫瘍であり,US/EUSでは膵を圧排する腫瘤として描出され,腫瘤径の大きい例ではbeak signを呈することもある.従って,膵に隣接する腫瘤を認める場合には発生母地が膵内か膵外かを吟味する必要がある.